「1on1のアジェンダが思いつかない。」
「議題はこれで大丈夫なのだろうか?」
と悩んでいませんか?
上長や人事部から1on1を実施するよう促されたものの、何を話せばよいのかわからないという方は少なくありません。とはいえ、部下の成長に影響するので大きな失敗もできません。
1on1の議題で悩んでいるあなたに、アジェンダの例や話が続かない場合の対処法を解説します。1on1で何を話すべきかわからない不安から解消されましょう。
目次
1on1とは
1on1とは、1on1ミーティングの略で2人だけで実施されるミーティングをさします。上司と部下ないしそれに準じた2人で行われます。会議の内容は、部下の目標や行動、キャリア、趣味などさまざまです。
1on1の目的
1on1の目的は部下の成長です。他の会議とは異なり、事業の計画やプロジェクトの進め方は議論しません。部下が成長するためには何を意識すべきか、どのような問題を解消すべきか、いつどのような対策を打つべきかなどを考えます。
1on1を早い段階で取り入れ成功させたヤフーも、1on1に対して次のように記述しています。
1on1で行うことは、
「週に1度30分間、場所を確保し、部下の話を聞く」
これだけです。
Yahoo! JAPANコーポレートブログより引用
注意すべきは、部下に「教育」するための会議ではなく部下が「成長」するための会議である点です。つまり、言われたことをやる受動的な成長ではなく、部下自身が考えたことを実行する主体的な成長を重視します。
1on1は、1on1ミーティングともいうことから会議を想像するかもしれませんが、実際にはお互いの意見をぶつけるというよりは部下の考え方を上司が受け止める・整理するという表現が正しいです。基本的には、部下の主張を尊重し上司はフィードバックをする程度に留めるのが理想です。
1on1の流れ
1on1の大まかな流れは次のとおりです。1on1ミーティングも会議と同じような流れで進めます。
- 話す内容を決める
- アジェンダについて話す
- 次回までの目標を決める
1. アジェンダを決める
1on1が始まったらまずはアジェンダを決めましょう。他の会議同様に前もってアジェンダを決めておいてもかまいません。
アジェンダをあらかじめ決めておけば1on1の時間を長く確保でき会話の時間を長く確保できます。1on1の時間が足りていない・アジェンダを決めておいたほうが話しやすいという場合は、アジェンダを設定してから1on1にのぞみましょう。
反対に、アジェンダをあらかじめ決めないメリットは、雰囲気がフランクになることです。まるで雑談のように1on1を始めれば「会議だからしっかり話さなくては…」と部下が緊張せずにすみます。
2. アジェンダについて話す
決定したアジェンダについて話し合いましょう。話し合うとはいえ会話をリードするのは部下です。部下が話したいこと・相談したいことに上司は耳を傾けるのが基本です。
当初のアジェンダから話がずれても心配はいりません。アジェンダになかった話は、当初予定していなかったが本当は相談したかった話しだと考えられるためです。アジェンダよりも部下が気になっていることを優先しましょう。
3. 次回までの目標を決める
アジェンダについてある程度話し終えたら、次回の1on1までにやるべきことを決めましょう。次のアジェンダになります。
アジェンダを決められなかったり話を続けられなかったりする場合は、毎回の目標をアジェンダにすると良いでしょう。上司と部下がお互いに負担を感じずにく1on1を実施できます。もちろん、目標以外もアジェンダにしてかまいません。
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詳細はこちら1on1のアジェンダ例【仕事】
アジェンダの例を3つのテーマに分けて見ていきましょう。
まずは仕事に関するアジェンダです。1on1で1番話題になるテーマが仕事に関しての話ではないでしょうか。業務に直接関係するため、1on1で話した際に影響がでやすいのも仕事の話です。
意識していることは?
仕事に対して何を意識して取り組んでいるのかを質問すれば、仕事への考え方・向き合い方が見えてきます。
タスクを速く終わらせることに気をつけているのか丁寧に進めることに気をつけているのか、思いついた意見をすぐに言うのか一度自分の中で考えてから発信するのかなど、仕事への取り組み方を観察できます。
また、部下が何を大事にしているのかわかるため、悩みの原因を推測できます。たとえば仕事の進みが遅い場合、単に効率が悪いのか多くの問題を考慮しているのか他のタスクが並行しているのかなど、多くの可能性が考えられます。部下の考え方を知っておけばどこでつまずいているのかおおよそ検討をつけられます。
仕事のモチベーションは?
部下が何をモチベーションにしているのかがわかれば、みすみすモチベーションを下げることはないでしょう。
企業のビジョンに納得している、社風が自分にあっている、希望する職種に就けている、満足する給料が支払われているなど多くの理由が考えられます。部下が自分と同じやりがいを持っていると思い込まないためにも、どこかのタイミングで一度は質問しておきましょう。
やりがいを把握していると離職の防止にも役立ちます。ビジョンに共感している従業員は会社が統合してビジョンが変わると離職するかもしれません。給料を欲している従業員は成果に伴った給料が支払われないと退職する恐れがあります。離職のリスクを知っていれば、大事な人材を逃しにくくなります。
行き詰まっていることは?
行き詰まっている点を確認し解消できれば、仕事の効率が上がりますし部下の成長速度も加速します。
悩みについて質問する際は、1on1の中盤以降にしましょう。1on1が始まったばかりの緊張しているタイミングで、重い話をすると部下はペースを乱されるかもしれません。
もし明らかに困っていそうな問題であれば、「〇〇の件、調子悪そうだったけど大丈夫ですか?」のように様子をみて質問してもよいでしょう。ただし部下が話したくなければそれ以上話を展開しないよう気をつけましょう。部下が自分で考え解決させたい問題もあります。
挑戦したいことは?
挑戦したいことを質問すれば、現在の仕事にモチベーションがあるのか、何に対してモチベーションをもっているのかを推測できます。
なにかに挑戦したい場合は、それ自体が主体的なことを意味するので一定以上のやる気があると判断してよいでしょう。
そのうえで部下は何をがんばりたいのか確認します。挑戦したいことは、具体的な業務内容でも業務に対する姿勢でもかまいせん。人材配置の関係で簡単には要望を叶えられないかもしれませんが、それに近しい手助けをできる可能性はあります。
1on1のアジェンダ例【キャリア】
続いてキャリアに関するアジェンダの例を紹介します。リクナビNEXTによると、30代のうち転職を経験した人の割合は53%と半数以上に上ります。多くの人が転職を経験する時代において、転職も含めたキャリア設計を考えるのは重要なことです。たとえ、部下が転職したいと思っていても支援したほうが、長期的にはお互いにプラスとなるでしょう。
実現したいキャリアは?
人生を長期的に考えたときに何を成し遂げたいのか、どうなりたいのかを質問します。今の業務やプロジェクトがキャリアにどのように役立つかを検討できるためです。
もしキャリアを考えていない様子であれば、あまり深堀りしないようにしましょう。口に出せないだけでなにか考えているのかもしれません。ただまったくなにも考えていないとわかった場合は何かしら対策したほうが本人のためになるでしょう。
キャリアを叶える計画は?
実現したいキャリアを先の質問で確認できたら、キャリアを実現するために考えているプランを質問します。計画を聞いたうえで、上司としてキャリアをサポートできないか考えます。現在の業務や他の部署でキャリアのためになる職務を経験させられないか考えましょう。
たとえ転職する将来が見えていたとしても、部下のキャリアを考えサポートするのが上司として重要ではないでしょうか。また、転職したい意思を無視されたら部下は上司を信頼しなくなるはずです。
ビジョン・ミッションは?
ビジョンやミッションを確認できれば、部下と仕事をするうえで大事にしなくてはならない点を押さえられます。
「ビジョン・ミッションはなんですか?」という直接的な質問はかならずしも必要ではありません。将来的に何を達成したいのか、どのような理想像を描いているのかを把握できる質問がであればかまいません。
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詳細はこちら1on1のアジェンダ例【プライベート】
1on1ではビジネスの話以外にプライベートの話をしてもかまいません。うれしかったことや楽しかったこと、悩んでいることを聞けば勤務中の姿からはわからない意外な一面を知れます。
ただし、プライバシーを侵害しないようにだけ気をつけましょう。プライベートの話はフランクに話しやすい反面、センシティブな内容も少なくありません。プライバシーに十分に配慮したうえで質問しましょう。
うれしかったことは?
うれしかったことを聞けばその人が何に対して喜びを感じるのかがわかります。
注意すべきは単にどのような事柄がうれしいのかを聞くのではなく、どのような点に対してうれしいと感じるのかを聞きましょう。音楽が趣味の人であれば、コツコツ練習するのが好きなのか仲間と演奏するのが好きなのかライブで派手にパフォーマンスするのが好きなのかでは、大きな差があります。
どこにうれしさを感じるのかがわかれば、モチベーションを感じるポイントや仕事に対する考え方も推測できます。業務を依頼する際は、部下がうれしさを感じられるポイントを明示できればやる気をもって取り組んでくれるでしょう。
楽しかったことは?
楽しかったことを聞く理由は、うれしかったことを聞く理由とほぼ同じです。ただし、楽しいこととうれしいことはイコールではありません。
楽しいという感情はなにかをしている最中に感じるもので、うれしいという感情は何かをしたりされたりしたときに一時的に感じるものです。モチベーションのきっかけを確認する際は、うれしかったことと楽しかったことの両方を確認すると、部下の原動力を推測できます。
悩んでいることは?
プライベートで悩んでいることを質問すると、業務で悩みやすいことを予測できます。
プライベートで悩むことと業務で悩むことは共通点があると思われます。たとえばプライベートで周りの目が気になっているのであれば、業務中も対人関係に悩んでいるかもしれません。
悩みは個人的な事情に介入する可能性があるので、気軽に質問できません。もし部下との関係性が良好でプライベートな話をしてくれる状況であれば、少し聞いてもいいかもしれません。深入りは厳禁です。
最近(週末)なにをしたか?
最近なにをしているのか聞くことは、プライベートに関する質問で1番簡単に聞けるでしょう。
どのような内容を話してもよいという点において、何に興味があるのかどのようなことを考えて生活しているのかが端的にわかります。
また、自分をどれだけ信頼してくれているのかもわかります。あまりにありきたりな話しかしてくれない状況では、他の質問をしても1on1の効果を十分に得られないと予想されます。反対に最近考えていることを素直に話してくれるのであれば、1on1の成果も期待できるでしょう。
1on1で会話が続かない原因と解決策
1on1で会話が続かない場合、原因はいくつか考えられます。
- 会話していい内容かわからない
- 会話しているけど続かない
- 会話すべき内容が思い当たらない
会話できないからといってむやみに質問を投げかけないようにしましょう。部下が萎縮していまいます。では原因別に解決策を解説します。
会話していい内容かわからない
会話のネタが出てこない場合、会話したいことがないのではなく内容が会話に値しないと認識しているケースが多々あります。話すべき内容だと判断していない理由を大きく2つにわけると、「話す内容」と「上司との距離感」の2つが考えられます。
話のレベルが低すぎると上司に話すまでもないと考えます。反対に、上司のレベルが高すぎると恐れ多くて話ができないと萎縮していまいます。つまり話す内容を上司が聞いてくれると判断したときに、はじめて会話が始まるということです。
話の内容に自信がなさそうなとき
話のレベルが低いのではないかと心配しているときは、ふとしたことでも話を聞くという趣旨の発言をしましょう。もちろん、発言しただけで話してくれるとは限りませんが、徐々に心をひらいてくれます。
注意すべきは、話を聞く姿勢を見せているにも関わらず、いざ話されたら話を聞かない状況です。これでは部下はますます話さなくなります。話を聞く姿勢が本当であることを示すためには、多少幼稚な質問でも心を広くもって聞き入れましょう。
上司と距離感を感じているとき
部下が上司との間に距離を感じているときは、自分を信頼してもらうほかありません。自分を信じてくれるようになるまで雑談やプライベートな質問で、距離を縮めるとよいでしょう。
会話しているけど続かない
会話しているけど続かない場合には、続けようとしているけど続けられないのか、続ける気がないために途中で会話をやめているのかを区別しましょう。話す意思がある場合は上司から働きかけることで改善できますが、話したくなさそうな場合はお互いが歩み寄らないと解決できません。「上司と距離感を感じているとき」で解説したように長い時間をかけて、良好な関係を築きましょう。
話を続ける意思がある場合
話をする意思が相手にある場合は次の2つの方法を試してみましょう。1つ目は、相手の話を相づちで深堀りする方法です。「なぜそのように考えるのですか?」「どうやって解決しましたか?」のように、WHYやHOWに準ずる質問をすれば、話の本質に触れられます。
2つ目は、相手が話したいポイントに誘導する方法です。今までの1on1で「業務で意識していることは?」や「仕事のモチベーションはなにか?」、「プライベートで楽しかったことは?」などを聞いていればその回答を利用できます。
部下が考えていそうな観点やモチベーションを感じやすいポイントについて触れるよう質問しましょう。直接的な質問でなくても部下が話し出すきっかけを引き出せれば十分です。興味のあることや話したいことであれば部下が進んで話してくれるはずです。
会話すべき内容が思い当たらない
ごくまれにですが、会話したい内容が本当にないケースもあります。自分も部下も理解していない場合と、部下だけが理解していない場合に分けて対策を説明します。
上司と部下が互いに思い当たらない
真に話すべき内容がない状況はおそらくありえません。上司も部下も話すべき内容を見落としているだけです。
本記事で解説した内容を参考に思い当たる節がないか考え直してください。ふとした悩みや聞きたいことでもかまいません。ささいな質問から1on1は始まります。
部下だけが思い当たらない
部下はわかっていないが自分はわかっている場合、話すべき内容に関する質問をさりげなく持ち出しましょう。
上司が主導権を握る可能性を抑えるため、直接的な質問は避けるべきです。ストレートに聞いてしまうとあたかも上司が知りたいから質問をしているように部下は感じてしまいます。部下が主体的に話してくれるように気をつけて質問を投げかけましょう。
1on1ミーティングの導入について相談する
詳細はこちら1on1のアジェンダは決めつけない
1on1のアジェンダは、決めたからといってそのとおりに進める必要はありません。多人数の会議とは異なり、1on1の目的は部下の成長です。部下が成長できるのであればアジェンダの内容からそれてしまっても問題ありません。
反対にアジェンダにそっていても部下の成長につながらないのであれば、異なる内容に方向転換すべきです。アジェンダどおりに話していても部下が成長しなければ1on1としての成果は皆無です。
1on1は部下が成長できるかどうかの視点で常に検討しましょう。
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1on1パーフェクトガイド
この資料で分かること
- 1on1の目的と活用方法
- 1on1導入での失敗例
- 1on1で取り扱うべき話題