タレントマネジメントとは、社員の才能を把握し、能力を最大限に引き出すマネジメント方法です。主に海外の企業で多く取り入れられ、労働環境が変わりつつある日本でも注目されています。
「自社でもタレントマネジメントを導入したいけど、実際に設計や運用方法をどうすればよいかわからない」
この記事ではそんなタレントマネジメントのやり方をお探しの方に向けて、タレントマネジメントの運用方法をステップごとに解説します。
この記事を読めば、タレントマネジメントの設計・運用方法がわかりますよ。
目次
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、タレント(従業員)が持つ個性やスキル、経歴や目標といった、あらゆる情報をデータ化し活用することで、戦略的な人材育成計画や管理に役立てる人材マネジメントの手法です。
近年の働き方に対する考え方の変化を受け、大企業を中心に取り入れられたことにより、注目を浴びています。
タレントマネジメントのやり方とは? 導入9つのステップ
ここからは、これからタレントマネジメント制度を導入したい企業向けに、制度設計や運用の方法について解説していきます。
ステップ① 目的の明確化
まずはタレントマネジメントを導入する前段階として、目的を明確化しましょう。
タレントマネジメントにおける最終的な目的は、成果をあげる有能な社員を増やすためのリーダーの育成です。ただし企業によっては、全社員の成長を促して適材適所に配置する、人材力の底上げを目的とする場合もあるでしょう。それぞれの目的により、人材の育成計画も異なります。
なにを重点的に取り組むか、企業の経営理念や抱えている課題もふまえて考えてください。
目的が「幹部候補やリーダーの育成」の場合
タレントマネジメント導入の目的が将来の幹部候補や次世代リーダー育成の場合は、ごく一部のエース、幹部候補を対象にタレントマネジメントを実施します。
専門性の高い知識や経験を持った人材が優先的にキャリアを積むことで、大いなる成長による成果が望めます。次世代リーダーを核とした人材戦略を立てることができ、強いチームづくりにもつながります。また次世代リーダーに絞って手厚くフォローすることで、重要な人材の定着も期待することが可能です。
ただし人材育成や人材の定着といったメリットがある一方で、周りの理解が得られずにチームの人間関係に影響してしまう、そもそも有能な人材がいないと成り立たない、といったデメリットについても念頭に置いておきましょう。
目的が「総合的な人材力の底上げ」の場合
総合的な人材力の底上げを目的とする場合、新人から幹部クラスまでの全社員を対象にタレントマネジメントを実施します。
社員がこれまでに得た知識や経験をデータで把握し、人材を適材適所に配置したり適切な育成プログラムを提供したりしていきます。またメンタル面でのモチベーション向上や目標管理などを通じ、個々のパフォーマンス力を底上げします。
ただし全社員を対象とするため多大な労力とコストがかかることは覚悟が必要です。また管理職を対象に、タレントマネジメントを理解してもらうための研修やコミュニケーションの場を用意するなど、マンパワーをかけて丁寧に組織へ浸透していくことが求められます。
ステップ② 「タレント」の範囲の決定
タレントマネジメントにおける「タレント」の定義としては、次世代リーダーや幹部候補に絞る場合と、広く社員全体をタレントとみなす場合の大きく2パターンがあります。
後者の場合、人事戦略に必要なリーダーのみならず、一般社員や退職した元社員、雇用には至らなかった採用候補者までが「タレント」として扱われます。
目的にあった人材を定め、採用や育成を進めましょう。
ちなみに、タレント採用候補となる優秀な人材の情報を管理するデータベースを「タレントプール」と呼びます。才能がある「タレント」を、蓄える意味を持つ「プール」するという単語を合わせた言葉です。タレントプールを有効に活用できれば、企業の目的が変わったり人材が不足したりと、人材戦略によりタレントの範囲が変わった時にも柔軟に対応できます。
タレントの範囲を決めた後には、タレントプールの整備も考えておきましょう。
ステップ③ 管理する情報の決定
タレントの範囲を決めた後は、タレントとして管理する情報の項目を決めていきます。
管理項目としては経歴や配属先、才能やスキル、業務に置ける目標や成果に対しての人事評価など様々です。
また人材に関するあらゆる情報を顔写真付きで管理すれば、細かく把握でき、人材育成や人材配置がしやすくなります。
その際には使いやすいタレントマネジメントシステムの導入をあわせて検討することをおすすめします。
【関連】タレントマネジメントツールを活用するメリットとは? 必要な機能についても解説 | ヒョーカラボ
ステップ④ 人材情報のデータ化、可視化
情報の管理項目が決まったら、情報収集を行います。データを収集し、可視化しないことにはタレントマネジメントは進みません。他の基幹システムから連係する、タレントマネジメントツールを使い新たに収集するなどを通じ、必要な情報を集めましょう。
また、情報は一度集めて終わりではなく、常に新しい情報に更新し、各部署間で共有できるような仕組みにすることが望ましいといえます。そして収集する情報の中には個人情報にあたるものも多くあるため、収集した情報は適切に管理するよう、注意してください。
ステップ⑤ 人材の採用、配置
タレントマネジメントの目的に応じて必要な人材を確保し、育成計画に基づいてタレントを適切な場所に配置します。
配置後はタレントがしっかりと能力を発揮できる環境か、育成計画の成果やモチベーションは向上しているかを定期的にアンケート調査などでチェックしていきます。
そのためには、現場との密なコミュニケーションが必要です。現場と人事が連携をしていくことで、情報をアップデートにもなりますし、タレントと職場環境や業務内容のズレが生じた際にも、いち早く気付けます。こうした点からみても、関係部署間での連携は欠かすことができない重要なポイントといえるでしょう。
コミュニケーションを行う上では、システムを通じた効率的な情報収集と、対面での丁寧な対話の療法が必要です。
ステップ⑥ 人材育成、人材開発
スキルについて理想と現状を比較し、そのギャップを元に人材育成プログラムを提供していきます。
具体的な手法としては、1on1ミーティングや目標管理、研修やOJT、eラーニングなど多岐にわたります。
タレントが能力を伸ばし、十分に発揮できるよう、社内でフォローアップ体制を整えましょう。
ステップ⑦ 適切な人事評価
タレントマネジメントにおいては、適切な評価体制の構築が必須になります。明確な評価体制を構築し、目標や成果に対して適切に評価することで、タレントの能力やモチベーションの向上効果が期待できます。
育成計画に取り組む際は、必ずモニタリングを行いましょう。モニタリングの方法としては、1対1での面談がおすすめです。定期的にモニタリングを実施し、計画に対して評価や見直しをします。
その際、必要ならば計画やシステムを一から考え直す場合もあります。十分にタレントが成長できるよう、育成計画どおりに遂行するだけではなく、しっかりと評価と改善を行いましょう。
ステップ⑧ 異動、昇進
適切な異動と昇進は、タレントマネジメントにおいて最も重要なことのひとつです。
タレントマネジメントシステムを活用し現在の各部署の状況を把握し、人材を適材適所に配置します。また異動を通じてタレントが蓄積すべき経験を適切に積めるように考えていきます。
将来の人材バランスや人件費などのシミュレーションを行った上で、適切な人材を昇進させていきます。
ステップ⑨ 運用の見直し
人事評価の部分でもお伝えしましたが、配置先での育成状況やタレントのモチベーションに応じて、その都度運用の見直しを行いましょう。
育成計画だけではなく、育成のシステムや教育体制そのものも見直す対象になります。これにより人材や戦略のミスマッチを防ぐことができます。
企業の競争力を高め、人材育成に磨きをかけることを考えるならば、人事においてもPDCAを回し続けることが重要なのです。
タレントマネジメントには必須の「スキルマップ」とは
タレントマネジメントでは、個人スキルを正しく管理することが基本となります。個人のスキルを管理する上で、スキルマップは利用しやすい方法です。
スキルマップとは、社員が持つスキルを可視化した一覧表です。社員のスキルを簡単に把握できるため、効率的に業務を割り振れ、個々の生産性を高めることができます。
また、チーム全体におけるスキルが見える化されるため、チームの強みや弱みを明確にすることが可能です。たとえば、チームメンバーのスキルに偏りがあれば個々の負担が増え、モチベーションが下がり業務に支障をきたすことも考えられます。このような偏りが見やすくなるため、人材育成や採用の指標として活用できます。
スキルマップについては別の記事で詳しく解説しています。この記事も参考にしてみてください。
【関連】スキルマップとは? メリット・目的設定の重要性・用途を解説 | ヒョーカラボ
タレントマネジメントの成功には、スキルマップが必要不可欠
この記事では、タレントマネジメントの制度設計・運用方法について解説しました。
タレントマネジメントを適切に導入するには、個人スキルの適切な管理が求められます。その上で、スキルマップは個人スキル管理に適している手法です。
人材マネジメントを改革するにあたり、まずはスキルマップを活用したスキル管理から始めてみてはいかがでしょうか。
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