各人材の能力を表形式にまとめたものを「スキルマップ」と呼びます。
10年以上前から活用されている人事ツールの一つであり、最近では「戦略的人事活動」の一環として、取り入れる企業が増えています。
今回ご紹介するのは、そのスキルマップを人材の評価基準に取り入れると何が起こるのか?についてです。
公正公平な人事評価を実施することは人事担当者にとって大きな課題ですが、その実現に苦慮している方も多いでしょう。そこに明確なプロセスがあったとしても、「人が人を評価する」ということは想像以上にムラが出るものです。
スキルマップはその課題を解決する鍵になる可能性が高く、人事課題を解決するソリューションになり得ます。まずは、スキルマップの概要から簡単に確認していきましょう。
目次
スキルマップとは?【おさらい】
百聞は一見にしかずということで、まずはスキルマップの一例をご紹介します。
項目 |
詳細 |
Aさん |
Bさん |
Cさん |
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営業スキル | 顧客管理 | 顧客情報を細かいところまで管理し、常に更新している。営業組織全体で顧客情報を扱えるよう共有を怠らない。 |
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3 |
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ヒアリング | 顧客のニーズに親身になってヒアリングできているか。顧客から信頼されているか。 |
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資料作成 | 営業資料の作成を無駄なく素早くこなしている。最低限のフォーマットは意識しながら、情報が見やすいよう体裁を整えている。 |
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1 |
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プレゼンテーション | 自社の商品・サービスについて十分な知識を有し、顧客の質問に対してあらゆる角度から回答ができる。自分本位ではない、顧客の立場に立ったプレゼンができている。 |
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商談成約率 | 商談数に対する成約数。
〜9% :1 |
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仕事効率性 | 生産性向上を意識し、仕事を効率化するための独自の仕組みを取り入れているか。職場で用意されている仕組みを効果的に利用しているか。 |
1 |
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システム入力 | 営業情報蓄積のため、営業システムへのデータ入力をこまめに行なっているか。 |
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これは、営業部門におけるスキルマップです。営業担当者として仕事上欠かせないスキルを項目化し、その詳細を記入して、各人材の評価を4段階や5段階で行います。
組織全体でも部門単位でも、スキルマップの基本形は上表のようになります。企業によってはスキルマップからレーダーチャート(多角形で表すチャート)を作成して、直感的なスキル把握を好む場合もあります。
スキルマップは汎用性が高いので、レーダーチャートに限らず様々なチャートを取り入れることで、様々な角度から人材を見つめられる優れたツールです。
戦略的スキルマップを人事評価に取り入れる
スキルマップは元々、製造業で一般化されていたツールです。生産現場において、作業員ごとに「何ができて、何ができないのか?」を明確にし、日々の生産ライン構成を考えるのに役立ちます。作業員ごとに何を教育すればいいかも明確になるので、生産工程ごとの属人化を防ぐツールとしても活躍していました。
これと同じように、人事評価にスキルマップを取り入れるということは、人材ごとの能力を把握しながら適切な人材配置へ繋げることになります。
注意すべきなのは、如何にして公正公平な客観的評価を下せるかどうかです。そのためには明確な基準をもとにした絶対評価と、人材間の違いをもとにした相対評価を取り入れ、なおかつ従業員の自己評価も参考にしながら精度の高いスキルマップを作ることが大切です。
また、スキルマップから組織全体のスキル底上げを図るような戦略的人事も可能なので、タレントマネジメントが重視されている現代ビジネスにおいて、スキルマップは欠かせないツールだと言えます。
スキルマップ×人事評価のメリット
スキルマップを人事評価に取り入れる意義は大きく、企業は様々なメリットを享受できます。代表的なメリットが、次に掲げる3つです。
人事評価に納得感が生まれて人事への不満が低減する
納得感のある人事評価というのは、想像以上に難しいものです。心理学にはポジティブ・イリュージョンと呼ばれる現象があり、人間は誰もが自分自身の能力に対して認知を歪めて、事実以上に評価する傾向があります。つまり、自分を過大評価するのが普通ということです。
なので、ほとんどの企業では人事評価に対する不満が多からず存在します。それを解消するのに大切なのが、客観的事実を提示することです。
精度の高いスキルマップがあると人事評価に対する納得感が生まれやすく、従業員の不満が低減する可能性があります。これにより離職率の低下に繋がります。
人材ごとの課題が明確になり、解決に向けた具体策が見つかる
組織全体の生産性を向上させるには、個人単位の生産性サポートが肝心です。ただし、本人が自分自身の課題に気づいていないことには、サポートによる効果も薄くなります。スキルマップはそうした人材に対して、課題を認知するきっかけになります。
企業としては何が課題で、どう解決すれば良いのか?が見つかるので、人材教育に効率よく取り組めるメリットがります。
キャリアアップが見えるからモチベーションが上がる
自分自身の課題に気づき、解決に向けた具体策が見つかれば「確実にスキルアップしている」と実感を持てます。小さな成功体験が自信へと繋がり、具体的なキャリアアップが見えるようになるので仕事に対するモチベーションも自然とアップします。
企業としては、そうした従業員の期待に応えるようにキャリアアップの場を用意することで、常に高いモチベーションを維持できます。
人事評価のスキルマップは随時更新が必要
人事評価にスキルマップを取り入れる場合、一番大切なポイントとは何か?それはスキルマップの作り方ではなく、「継続的にPDCAサイクルを回すこと」です。
P(Plan)=計画、D(Do)=実行、C(Check)=確認、A(Act)=改善。ビジネスで当たり前とされるこのフレームワークは、スキルマップを最適化する上で極めて重要なポイントです。
まず前提として考えていただきたいのが、「最初から完璧なスキルマップは存在しない」ということ。完璧主義者が多い日本人は最初から100%を目指す傾向が強く、実施後はそれが正解だと信じて止みません。
しかし、初めてスキルマップ作りに取り組む企業が、最初から100%正解のスキルマップを作れることは稀中の稀です。実態に即していないモノを作ってしまう方が大半で、それはいくら協議を重ねた上で作成したスキルマップでも同様です。
だからこそ、継続的なPDCAサイクルが大切です。
スキルマップ作りを一度で終わらせるのではなく、「継続的に作りつづけるモノ」と考えて随時更新していきます。スキル評価項目、評価基準、評価段階、評価方法などPDCAサイクルで対応すべき項目は多いですが、改善なくして最適なスキルマップは完成しません。
人事評価にスキルマップを取り入れてみよう
公正公平な人事評価が実現できれば、仕事に対する従業員満足度は確実に上がります。それすなわち、モチベーションの向上や離職率の低減、生産性向上などに繋がり、組織全体のビジネスステージを底上げする戦略的人事になります。
スキルマップの活用法としてより効果的なのが、1 on 1ミーティングを取り入れ、管理職と従業員が常に本音で会話できる環境を作ることです。
上司から部下に対して目標設定を言い渡すだけでなく、部下から色々な本音を引き出し、個々人の課題を一緒になって解決する姿勢を取ることで仕事に対する不満は解消され、成長をサポートできます。スキルマップは1 on 1ミーティングの効果を高めるという点においても、優秀なツールなのです。
この機会にぜひ、スキルマップの活用を検討してみてください。
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