管理職を評価するためのスキルマップも作成できます。管理職に求めるスキル要素を盛り込むことで、マネジメントスキルの向上が期待できるでしょう。同じ部門や部署にいても、管理職に求めるべきスキルは一般従業員とは大きく異なります。
今回は、管理職にはどのようなスキルが必要なのか、また管理職を評価する際に含めたいスキル要素や意識ポイントを見ていきましょう。
目次
管理職・マネージャーの役割とは?
はじめに、管理職・マネージャーがどのような役割を担うポジションなのかを解説します。一般従業員やリーダーなどのポジションと比較しながら、理解を深めていきましょう。
管理職と一般従業員の違い
一般従業員がやるべきことは、業務の遂行です。業務の最前線で、直接、作業・行動することで求められる仕事を完了する責任を担います。
一方、管理職の役割は、その名称が示すように業務状況や進捗を「管理(マネジメント)」することです。求められる成果を出す役割と責任を担っています。業務計画を立て一般従業員に仕事を割り振り、個々の従業員の進み具合を確認しながら成果を導き出すのが仕事です。
割り振る仕事の全体を管理していきます。進捗を確認する途中で、業務計画に遅れが出ることのないよう一般従業員のサポートやフォローも重要な仕事です。部下のスキルや能力を見ながら適切に仕事を割り振り、今より高いレベルの人材に育成する役目も担います。
このように直に仕事を遂行するのは、本来は管理職の本分ではありません。ただ、昨今では業務遂行と業務管理の両方をこなすプレイングマネージャーも多いようです。
マネージャーとリーダーの違い
管理職のポジションはマネージャーと呼ばれることもあります。マネージャーの語源は英語のManageです。「管理する」という意味もあるのですが、「うまくやる」「なんとかする」という意味も含みます。役割は上記でご説明した通り「管理(マネジメント)」や「育成」です。
組織の中にはリーダー職を設けているところもあります。マネージャーの配下、あるいはチームごとに配置されていることが多いでしょう。リーダーの語源はLeadです。「先導する」「率いる」「~する気持ちにさせる」などの意味を持ちます。
リーダーの役割は、チーム内の一般従業員を鼓舞し、目的や目標の達成に向けて先頭で引っ張っていくことです。求められるのはいわゆるリーダーシップの発揮であり、管理職のような強制力は持ちません。リーダーシップのもとでは、リーダーの働きかけによって、周りのメンバーは自発的に動くべきものだからです。
リーダーも組織の一員ですから、社内のルールや規則に従う必要はあります。しかし、マネージャーのように、皆をルールや規則に則って「管理」「育成」することは求められていないのです。
管理職に求められる3つのスキル
では、ここから管理職に求められるスキルを見ていきましょう。この項目で紹介するのは「カッツ理論」として知られる3つのスキルです。それぞれの特徴や難易度が異なりますが、管理職には3つのすべてが求められます。スキルマップを作成する際の大枠の項目として参考になるでしょう。
※カッツ理論とは、ハーバード大学の教授だった経営学者、ロバート・リー・カッツ氏が提唱(1955年)した人材スキルに関する理論
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、業務を遂行するために必要なスキルの総称です。このテクニカルスキルは、管理職に限らず、すべての人材に求められます。
例えば、商品に関する知識や技術、方法や手順に熟達していることなどです。情報収集力、分析力や文章作成能力なども含まれます。新卒や若手の新入社員でも、テクニカルスキルの有無は重要視される要素です。
具体的にどのようなテクニカルスキルが必要になるかは業種や職種によって大きく異なります。一方、分析力や文章作成能力などのように汎用性の高いスキルも少なくありません。
テクニカルスキルは、管理職の中でもより下級レベルの層で重視されます。管理職の場合は一般社員より高度なテクニカルスキルが求められるでしょう。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは、対人・人間関係を円滑に築くのに必要とされるスキルの総称です。細かくすれば幅広く、コミュニケーション能力、調整力、交渉力、プレゼンテーション力などがあります。
仕事では、職場の上司や部下・同僚、顧客や取引先など多くの人と関わります。言い方を変えると必ず誰かと関わって遂行・完結できるものですから、このスキル群もすべての人材に求められるでしょう。
管理職の場合、部下の上長として顧客や取引先、あるいは会社の上層部と対峙する場面も多いものです。相手の意思を的確に汲み取り、適切な提案や解決策を提示するなど適切な対応が求められます。どのような結果や成果が出せるかが、どのような対応をしたかで決まることも少なくありません。また、部署やチームに対立や摩擦が生じたとき、うまく折り合いを付け、結論に導くのも管理職の役目です。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは、物事の全体を見て概念化し、本質的な課題を捉えるスキルです。イメージしやすいように、まずはスキルの例から見ていきましょう。
水平思考、批判的思考、多面的視野、俯瞰力、洞察力、先見力などが挙げられます。コンセプチュアルスキルは、とくに上層管理職、経営層などに求められるスキルです。
企業は部門や部署に分かれ、それぞれの担当業務を進めます。それぞれに進めていても、ほかの部門や部署の状況に依存し合っているものです。例えば、A部署の何かが変化するとその影響はA部署だけでなくあらゆるところに波及します。A部署で行われた変更により、自分の部署で分析に用いていた情報を変える必要が出てくるかもしれません。
あらゆる変化がある中でも、的確な判断や最適な方法を導き出すには、そのような作用を理解しておく必要があるのです。ここでは企業単位で説明しましたが、企業のビジネスは社会、経済、政治などあらゆるものの影響を受けます。コンセプチュアルスキルは、このような物事の作用や影響を認識するスキルといえるでしょう。
管理職を評価するための項目要素
管理職は部下を評価する一方で、従業員の一人として自らも評価されるわけです。管理職の役割については前述しましたが、一般従業員の評価項目とは視点が異なってきます。そこで、管理職を評価する際に、どのような能力や資質を押さえておくべきかを見ていきましょう。スキルマップを作成する際の、各項目の事例も挙げていますので参考にしてください。
業務に必要な知識や技能
管理職は部下である一般従業員や彼らが遂行する業務を管理します。その適切な管理には、業務遂行に必要な商品知識や技能を持ち、方法や手順も熟知していなければなりません。たとえ直接の業務遂行者でなくても、管理するには仕事をよく理解していることが重要なのです。一般従業員より高いレベルが求められるでしょう。
例:
〇業務知識:業務遂行に必要な知識・技術を熟知し、業務管理(分配・調整)している。
〇業務改善:現状を的確に把握し、知識・技術を駆使して有効な改善ができる
部下を育成する能力
管理職は成果を上げるだけでなく、部下の育成も担います。部下の成長は上司次第といわれるほど、重要な立ち位置にあるのです。一般従業員だった時期に優秀だったからといって高い育成力を持っているとも限りません。
日々、部下を観察し、業務管理だけでなく育成観点からのフォローやアドバイスも必要とされるのです。個々の部下レベルに合わせて、分かりやすく的確に伝達するスキルも求められます。
例:
〇部下育成力:声かけや観察を密に行い、的確なフォローやアドバイスをしている。
〇対人能力:相手の知識レベルに応じて、的確でわかりやすい伝達ができる。
物事に対する俯瞰的な視点
管理職は、自分の部署の業務だけを見ればいいわけではありません。担う部署の仕事は周りの部署とつながっているからです。会社が掲げるビジョンや目標を踏まえ、他部署との連携やお互いの影響を考えながら管理する必要があります。社内を俯瞰して見ることが大事なのです。
会社単位だけでなく、社会や市場などより大きな範囲を見ながら判断したり、指示を出したりすることが求められる業種もあるでしょう。
例:
〇情報収集力:社内外の情報を積極的に入手し、業務に活かしている
〇連携促進力:経営方針やビジョンを理解し、他部署と円滑に連携し協働できている
長期的な視点で計画・達成する能力
現場業務に密に接する人ほど、今の課題や問題の解決に意識が向きがちかもしれません。管理職は、目先の必要性や重要度だけで判断してしまうと求められる成果に近づくのは難しくなるでしょう。中・長期的に見て必要なのか、重要なのかという視点を持って業務計画や育成計画を立てなければならないのです。
時間的に遠くなるほど抽象的になるため難易度も上がります。将来まで時間軸を広げ、今の目標に対する計画を具体化する力が必要です。
例:
〇計画立案力:中長期の視点で部下や組織の成長につながる業務計画を策定できる
〇目標管理力:中長期の視点で与えられる目標を適切に細分化・具体化できる
〇目標達成力:戦略的視点で立案した業務計画をもとに求められる成果が出せる
管理職を評価する上での重要ポイント
では、ここで、管理職を評価する上で押さえておきたいポイントを解説します。人事評価とスキルマップを連動させる場合も以下のポイントを加味してスキル項目を作成していきましょう。
定量・定性要素のバランス
管理職の職務には、達成率、離職率、成果など数値で出せるものが多々あります。一方で、部下育成やヒューマンスキルなどは、数値で測ることが難しいものです。管理職の場合、目標達成率や業績が重視される傾向は否めません。
しかし、数字にできない職務があるのも事実です。自社の方針や管理職レベルに応じて、数値測定する項目と数値に頼らずに測定する項目のバランスを適切に調整しましょう。
自社の理念や方針に沿うマネジメント
管理職といっても十人十色で、それぞれが異なる個性や強みを持っています。ただし、マネジメントの方向性や進め方については、自社の理念や方針に沿ってできるだけ統一化できるのが理想です。
マネジメントは社内ルールに則って行なわれるものですから、ばらつきは混乱や不満を招きます。個々の管理職への意識喚起のためにも評価項目に含めておいたほうがいいでしょう。
部下からの信頼性
部下との強固な信頼関係を築けるかどうかも重要なポイントです。業務進行やアウトプットの質、ひいては成果を大きく左右する要素といえるでしょう。
例えば、手本となる言動・行動をしたり、自分自身も啓発や向上のための取り組みを実行していることは信頼関係にも影響します。部下から信頼されているか否か、どのような点で信頼を得ているかについては、管理職を評価する上司からは見えにくいものかもしれません。
管理職のスキルマップは誰が評価する?
スキルマップは、人事評価や人材育成に役立つツールとして認識されています。そのため、部下のスキルマップは、直属の上司が評価するのが一般的です。その上司(管理職)のスキルは、さらに上層の管理職が評価するのも一つの方法でしょう。ただし、上司だけでは対象社員の仕事ぶりや業務プロセスの全体を把握しにくいのが難点です。
もう一つの方法として、上司に加えて部下や同僚も対象の管理職を評価する、360°評価を採用する企業もあります。多面的な評価ができるため、本人や周囲の納得度が高くなるのがメリットです。評価される本人も、さまざまな角度から評価されることで上司評価だけでは得られない気付きも得られるでしょう。
管理職を誰が評価するかは、スキルマップ作成の前に決めておくことをおすすめします。管理職の評価能力と一般従業員の評価能力には差があるからです。それぞれの評価の視点も変わってくるでしょう。いずれの方法を採用するにしても、評価者の評価能力と視点に合わせたスキルマップ項目を決定することが大切です。
まとめ
管理職には、部下の業務を管理し、成果を導き出すことが求められます。この点は数値でも見えやすいですが、部下育成や信頼構築などはなかなか目には見えにくいものです。スキルマップには、管理職に求める役割の項目をバランスよく反映させることをおすすめします。総合的に評価されれば、着実なマネジメント力のアップが期待できるでしょう。
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