「案件に担当者をアサインしたいが、誰が適任かわからない」
「社員の誰がどんなスキルを持っているかわからず困っている」
人材活用を行う上で、上記のようなお悩みをお持ちではないでしょうか?
このような課題を解決するには、「スキルマップ(力量管理表)」の整備が有効です。
今回は、スキルマップ(力量管理表)とは何かについてわかりやすく、例を元に解説します。また、スキルマップを導入する6つのメリットや、スキルマップの作成方法についても詳しく紹介します。
これを読めば、スキルマップの概要や作り方が簡単に理解できますよ!
目次
スキルマップ(力量管理表)とは? 例で解説
スキルマップ(力量管理表)とは、社員一人ひとりのスキル評価を一覧にしたものです。例として、最もシンプルなスキルマップを以下に示します。
Aさん | Bさん | Cさん | Dさん | Eさん | |
---|---|---|---|---|---|
課題分析 | 5 | 1 | 2 | 2 | 5 |
ロジカルシンキング | 5 | 1 | 5 | 3 | 5 |
タスク管理 | 4 | 2 | 5 | 1 | 3 |
資料作成 | 3 | 2 | 5 | 3 | 3 |
関係構築力 | 3 | 3 | 2 | 5 | 5 |
交渉力 | 2 | 3 | 1 | 5 | 4 |
プレゼンテーション力 | 2 | 4 | 3 | 5 | 3 |
このスキルマップでは、「ロジカルシンキング」や「交渉力」といったスキル項目について、各人を5段階で評価しています。
ところで、お客様への企画提案をするために、AさんからEさんまでの中より数人選び、チームを作って役割分担をしたいと考えたとします。どのような役割分担をすれば良さそうでしょうか。
このスキルマップを見ると、たとえば以下のようなことがわかります。
- Aさんは課題分析やロジカルシンキングに長けている
- Cさんは資料作成に長けている
- Dさんは最もプレゼンテーションが上手い
このスキルマップを元に、Aさんに課題分析を、Cさんに資料作成を、Dさんにプレゼンテーションを担当してもらえば、お客様へ良い提案ができそうですよね。
このように、スキルマップを整備し活用すれば、有効な人員配置や役割分担を行えるようになるのです。
スキルマップ(力量管理表)を作成する6つのメリット
スキルマップ(力量管理票)を整備することで、的確な人材配置が可能になります。それ以外にも、人材育成や評価の透明性向上など、様々な効果があります。
- メリット① 人材配置や案件の割り振りに役立つ
- メリット② 組織の人員獲得・育成の参考になる
- メリット③ 社員間でのスキル・ノウハウ共有が促進される
- メリット④ 自身やライバルの強み・弱みが可視化され、競争心を喚起できる
- メリット⑤ 昇格や昇進の透明性を高める効果も
- メリット⑥ 営業に使える
メリット① 人材配置や案件の割り振りに役立つ
冒頭の例でも紹介したように、誰がどのようなスキルを持っているのかが簡単にわかるようになります。これにより、有効な人材配置ができるようになります。
たとえばタスク管理能力が高いが交渉が苦手なメンバーと、タスク管理は苦手ですが交渉が得意なメンバーをペアにし、お互いの弱みを補いあうなど、シナジー効果を生めるような配置ができるようになるのです。
また、建設業などのように、業務の受託や遂行に特定の資格保有者が必要な業界があります。このような業界においては、資格の取得状況をスキルマップの項目に追加することで、資格保有者を一元的に可視化することも有効です。
メリット② 組織の人員獲得・育成の参考になる
スキルマップは、採用や人材育成における有効な参考材料となります。
スキルマップを整備すると、「組織内にどのスキルを持った人が何人いるのか」を数値化できます。これにより、たとえば次のようなことがわかるようになります。
・組織内において理想とするスキル保有者の数と、実際との差がわかる
・あるスキルを持つ人が極端に少ない場合、急な退職・休職で業務に支障が出るリスクがあることがわかる
これにより、どのスキルを持つ人を何人育成・採用しなければならないかが計算できます。つまり、より詳細な人員計画が作成可能になるのです。
メリット③ 社員間でのスキル・ノウハウ共有が促進される
スキルマップを公開すると、一般社員は一人ひとりの持つ強みが一元的に閲覧可能になります。これにより、業務を進める上で困ったとき、誰に相談すれば良いかがわかるようになります。このように、スキルマップを整備することで、社員間でのスキルやノウハウの共有を促進することが可能です。
また、自身の伸ばしたいスキルを持つ人や、ロールモデルとなる人物をスキルマップから容易に探せるようにもなります。スキルマップの整備により目指すべき人物像が明確になることで、人材育成にも寄与します。
メリット④ 自身やライバルの強み・弱みが可視化され、競争心を喚起できる
スキルマップを公開すると、自分はもちろん、同期やその他役職の近い人材が、それぞれどのように評価されているか、お互いに見えるようになります。これにより、健全な競争心を喚起する効果も期待できます。
メリット⑤ 昇格や昇進の透明性を高める効果も
社員のスキル評価を開示することで、昇格や昇進に関し、公正さや納得感を出す効果もあります。
また、人事評価制度とスキルマップを連携することで、「このスキルがこの段階までいくことが昇格・昇進の要件である」と示すことも可能です。これにより、昇進や昇格の目標が明確になり、社員のモチベーションアップにもつながります。
メリット⑥ 営業に使える
特定の業界(システムインテグレータ、土木・建築・建設業など)では、業務を受注する上で必要な資格取得者や、高いスキルを保持している社員数を示す必要があります。
このような業界においては、スキルマップを整備することで、営業資料にも転用できるというメリットがあります。
スキルマップ(力量管理表)を活用する上での3つの懸念点・デメリット
このように人材の配置や育成、営業力の向上など、様々なメリットが期待できるのがスキルマップです。しかし導入においては、次のような懸念点についても考慮が必要です。
懸念点① 作成に時間と労力がかかる
スキルマップにはテンプレートもありますが、基本的には自分の組織にあわせてカスタマイズをする必要があります。スキル項目の精査やマップの作成に時間と労力がかかります。
また、スキルマップの表を整備するだけではなく、評価が想定通り行われるかテストしたり、周知や教育をしたりと、運用に関するマンパワーも必要です。
懸念点② 公平性や網羅性、妥当性の担保が必要
スキルマップは誰が見ても評価項目や内容、評価結果に公平感や納得感があることが求められます。
そのため、スキル項目の網羅性や粒度の統一、評価基準の妥当性など、公表されても不満が出ないような状態にする必要があります。
懸念点③ 随時アップデートする必要性
スキルマップは一度作ったら終わり、というわけにはいかず、随時アップデートしなければなりません。業務遂行に必要なスキル項目はビジネス環境の変化によって刻々と変化しますし、社員一人ひとりのスキルもやはり同様に変化するからです。
そのため、項目自体の見直しと、スキル評価の実施が定期的に必要となります。
スキルマップ(力量管理表)の効果が特に期待できる業界・部門・職種とは
スキルマップの整備は、特定の資格や能力を持った人を配置するビジネスモデルの業界・部門・職種において、特に有効だと考えられます。
IT業界・情報システム部門・エンジニア職
IT業界においては、ITスキル標準(ITSS)という業界標準のスキルセットが用意されています。このITスキル標準を元にシステムエンジニアの派遣や案件のアサイン、人材育成を行うような運用をしている会社もあります。
そのため、IT業界やIT関連の職種に関しては 、このITスキル標準に準拠する形でスキルマップを整備することが有効です。
【参考】ITスキル標準関連:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
土木・建築・建設業
IT業界と同様に、土木・建築・建設業においてもスキルマップの整備は有効です。
土木・建築・建設業においては、前述のように資格取得者の一覧を整備し、社員のマネジメントや営業に活用する方法がおすすめです。
製造部門・技術部門
製造や技術部門においては、特にISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)の要求事項として定められている「 力量表」を作ることが有用です。
ISO9001及びISO14001において、ともに以下のように社員に対し力量評価を行うことが要求事項として定められています。この力量の評価及び管理を行う方法として、「スキルマップ(力量表)」が広く利用されています。
介護職
介護職においては、生産性向上や人材育成の観点において、スキルマップの活用が期待されています。
厚生労働省によると、少子高齢化にともない、介護職人材の不足と介護需要の増加が予測されています。このような状況に対応するために、介護業界における生産性向上が喫緊の課題となっています。
生産性を高める上で必要なのが、スキルマップの整備です。スキルマップを定めることで、職員一人ひとりの目指す姿が明確になり、目標設定や課題把握に役立つと考えられています。
【参考】介護分野における生産性向上e-ラーニング|厚生労働省
スキルマップ(力量管理表)の作り方 8つのステップ
スキルマップの作り方は次の8ステップです。
- ステップ① 目的の再確認
- ステップ② 対象者・部門の選定
- ステップ③ テンプレートの調査
- ステップ④ スキル項目の洗い出しと精査
- ステップ⑤ 何段階評価にするか、達成基準を決める
- ステップ⑥ 評価者を決める
- ステップ⑦ 実験しフィードバックをもらう
- ステップ⑧ 展開し記入をサポートする
ステップ① 目的の再確認
まずはスキルマップにより何を実現したいかを考えましょう。
営業での利用が目的であれば、資格の取得状況や業務の遂行能力について、お客様に伝えられるよう詳しく洗い出す必要があります。
一方人材育成やモチベーション向上が目的であれば、「業務へのやる気」や「積極性」といった定性的な評価項目も用意しておくと良さそうです。
人事評価の透明化が目的であれば、人事評価と連動するような評価項目を整備しましょう。
このように、何を目的とするかによってスキル項目は大きく変わります。そのため、確固とした目的を定めることをおすすめします。
ステップ② 対象者・部門の選定
いきなり全部門を対象にスキルマップを整備するのは危険です。作業も大変ですし、運用に慣れない中実施するのは負荷が高くなってしまうことが予想されます。最初は特定の部門に集中して導入すると良いでしょう。
ステップ③ テンプレートの調査
まったくのゼロベースからスキルマップを作成するのは大変な作業です。そのため、既に公開されているテンプレートを流用し、カスタマイズすることをおすすめします。
どのようなテンプレートがあるかについては、別の記事も参考にしてみてくださいね。
ステップ④ スキル項目の洗い出しと精査
スキル項目を洗い出しする上では、次の3点に気をつけると良いでしょう。
- ポイント① 数や粒度を決める
- ポイント② 部門長や管理職の力を借りる
- ポイント③ 業務フローと照らし合わせて漏れがないか確認する
ポイント① 数や粒度を決める
概ねどの程度の数のスキル項目を用意するのか決めておきましょう。複数の職種に対してスキルマップを適用する場合、粒度が異なると統一する作業が大変になります。
ポイント② 部門長や管理職の力を借りる
スキル項目を洗い出す上では、業務や必要なスキルを理解しているであろう、部門長や管理職に考えてもらうとスムーズです。
ポイント③ 業務フローと照らし合わせて漏れがないか確認する
標準的な業務フローが用意されている場合は、そのフローと照らし合わせて、考慮できていないスキルがないか確認することをおすすめします。
ステップ⑤ 何段階評価にするか、達成基準を決める
スキル項目が洗い出されたら、評価の段階数と達成基準を定めます。
ステップ④にも共通しますが、評価基準の説明が抽象的すぎると評価がまちまちになってしまいます。一方具体的すぎると評価に手間がかかり、扱いづらくなってしまいます。難しい所ですが、簡潔な評価項目や達成基準となるよう工夫してください。
ステップ⑥ 評価者を決める
誰が評価するかを決めましょう。評価者については、大きく以下の2パターンに分かれます。
- 上長が行う場合
- 特定の評価担当者を定める場合
ステップ⑦ 実験しフィードバックをもらう
質の高いスキルマップの整備のためには、作成したスキルマップをテストし、評価者のフィードバックを元に改善することをおすすめします。書きづらい点がないか、不明確な評価項目がないかなどをチェックしてもらいましょう。
ステップ⑧ 展開し記入をサポートする
スキルマップが完成したら展開しましょう。しっかり記入してもらえるよう、書き方の補足資料を作成したり、問い合わせ窓口を用意したり、わかりづらい点がないか等を確認したり、手厚くサポートすることが肝要です。
スキルマップ(力量管理表)は定期的に見直そう
今回はスキルマップ(力量管理表)を導入するメリットと注意点、作成方法について解説しました。
スキルマップは作って終わりではなく、随時アップデートをかけていく必要があります。評価者や社員の声も聞きながら、随時ブラッシュアップしていきましょう。
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この資料で分かること
- スキルマップ項目の基本
- スキルマップのテンプレートと作成方法
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