「日本的な働き方であるメンバーシップ型雇用から抜け出したい!」
「ジョブ型雇用に注目しているけど、そのままでは使えなさそう……」
そんなときに検討すべき雇用形態が、ロール型雇用です。
この記事では、ロール型雇用の特徴をジョブ型雇用やメンバーシップ型雇用と比較してわかりやすく解説します。
この記事を読めば、どのような雇用形態が自社に向いているか、しっかり理解できますよ。
目次
ロール型雇用とはジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のハイブリッド
日本的な働き方であるメンバーシップ型雇用をベースに、ジョブ型雇用の要素を取り入れたのがロール型雇用です。
メンバーシップ型雇用では、これまでの評価結果を参考に、社員に対して等級を設定します。そしてその等級に基づき、全社的な人員バランスを加味しながら部署や役職などを決めていきます。つまりメンバーシップ型雇用では、メンバーに対して業務を割り振ります。
一方ジョブ型雇用では、会社内で必要とされる業務を定め、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」として記述します。そしてそのジョブディスクリプションに基づき、必要な業務を遂行できる人材を獲得し配置します。つまりジョブ型雇用では、担ってほしい仕事に対し、それが担える人材を当て込みます。
そしてロール型雇用では、会社のメンバー一人一人に対し、期待する役割(ロール)を明確に定めていきます。そして、その期待する役割によって難易度や重要度を定め、成果に応じ給料を支払うのです。
ロール型雇用の特徴とは? ジョブ型雇用、メンバーシップ型雇用と比較
ロール型雇用の特徴をわかりやすく理解するために、ロール型雇用、ジョブ型雇用、メンバーシップ型雇用を比較表にしました。
ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 | ロール型雇用 | |
---|---|---|---|
雇用制度の原点 | 職務 | 人材 | 人材 |
職務 | ジョブディスクリプションに定めたもの | 曖昧・総合的・非限定的 | 役割を明確に決める |
スキル | ひとつの分野で専門的 | 多分野で総合的 | 役割で総合的 |
担当の仕事・任務 | 明確で専門性で決める | 能力や意欲で決める | 役割を明確に決める |
役割 | 明確である | 曖昧である | 明確である |
評価基準 | 職業の能力を重視 | 職務内容により評価が曖昧 | 役割の難易度、期待を重視 |
雇用の保障 | 仕事が終わったら解雇される | 解雇されない | 解雇されない |
報酬 | 職務給 | 職能給 | 役割給 |
教育 | 自主的に行う | 会社が行う | 役割によって行う |
キャリア形成 | 自分で決める | 会社が決める | 会社と社員で一緒に決める |
ロール型雇用の特徴についてまとめると、以下のようになります。
- メンバーシップ型雇用と同じで人材を起点としている
- ジョブ型雇用と同じで職務は役割が明確である
- スキルは役割で決まるため専門性・総合的である
- 評価基準は役割に対する難易度、期待を重視している
- メンバーシップ型雇用と同じで雇用の保障がある
- 報酬は役割給である
- 教育は会社が役割によって行う
- キャリア形成は会社と社員で決めていく
このようにロール型雇用では、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の良い点をハイブリッドしていることがわかります。
ロール型雇用が注目されている理由は「解雇の難しさ」と「報酬のコントロール」
日本におけるジョブ型雇用導入の大きな問題のひとつには、「ジョブ型雇用の人材を雇用した後、その業務が不要になった際に解雇できない」ことが挙げられます。日本では雇用が法律により強く守られているため、容易に人材を解雇できないのです。
そこで注目されているのがロール型雇用です。
ロール型雇用では、雇用した人員に対して求める役割を定め、その役割に応じて報酬を支払います。人員が余った際には、その人員に求める役割を変えることで、職務を変更できます。そして求める役割がより簡単なものになった場合、その分だけ報酬を下げることができます。
この報酬のコントロールは、メンバーシップ型雇用ではなかなかできません。つまり、ジョブ型で実現できない人員整理や配置転換がしやすく、メンバーシップ型で実現できない報酬のコントロールができること、それがロール型雇用の注目される背景です。
ロール型雇用制度のメリット2点
ロール形雇用には2点のメリットがあります。
- メリット① メンバーシップ型雇用から移行しやすい
- メリット② テレワーク・リモートワークと相性が良い
メリット① ジョブ型雇用と比べ、メンバーシップ型雇用から移行しやすい
ジョブ型雇用では成果主義的なニュアンスが強いため、既存社員から大きな反発にあう可能性があります。しかしロール型雇用では、メンバーシップ型雇用がベースにされていますので、社員の心理的安全性を保つことができます。
またジョブ型雇用は、労力のかかるジョブディスクリプションの作成が必要となります。一方ロール型雇用でも期待する役割を定めていきますが、ジョブディスクリプションほどの労力は不要です。
以上のことから、ロール型雇用はジョブ型雇用と比べ、メンバーシップ型雇用から移行しやすい制度であるといえます。
メリット② テレワーク・リモートワークと相性が良い
また、コロナ禍で急遽必要とされる、テレワーク・リモートワークへの対応がしやすいのも、大きなメリットです。
テレワークやリモートワークでは在宅中心になるため、上司が部下の勤務態度について評価しづらいという問題があります。
ロール型雇用であれば、社員に期待する役割が明確に決まっています。そのため「期待する役割を果たしているかどうか」を重視して評価できます。
勤務態度以外の要素を評価できるため、メンバーシップ型雇用での評価と比べ、リモートワークやテレワークでの評価がしやすいのです。
ロール型雇用のデメリット2点
一方ロール形には、以下のようなデメリットがあります。
- デメリット① ジョブ型雇用と比べ専門性の高い人材が採用しづらい
- デメリット②賃金の決め方が曖昧
デメリット① ジョブ型雇用と比べ専門性の高い人材が採用しづらい
ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションとして職務を明確に定めます。そのため、その職務を担える専門性の高い人材が採用しやすいメリットがあります。
しかしロール型雇用での採用方法は、メンバーシップ型雇用と近しくなります。そのためジョブ型雇用と比べ、専門性の高い人材が獲得しづらい可能性があります。
デメリット②賃金の決め方が曖昧
ロール型雇用の報酬の決め方は、主に役割給によります。「この役割を担ってくれたらこの金額」という決め方になりますが、社員としては年次や成果給よりもその報酬の決まり方が曖昧に感じられることがあります。
ロール型雇用以外の方法も
ロール型雇用以外の雇用形態も存在します。たとえば近年欧米や日本で広まりつつある「タスク型雇用」です。
タスク型雇用では、プロジェクトを担う人材を、会社外部から調達します。つまりフリーランスや複業人材を活用するのです。
またタスク型雇用では、プロジェクトの解散やタスクが終了すると同時に雇用が終了します。つまり「タスク雇用型」とは、プロジェクトで発生した課題を達成するための雇用となります。
タスク型雇用の特徴としては、技術力のある人材の手を借りやすい点にあります。プロジェクト終了に伴いチームは解散されますので、不要な人材を抱えづらい点も大きなメリットです。
反対のデメリットとしては、必要な人材を必要なタイミングで調達できるとは限らない点にあります。特に引く手あまたの高度専門人材は、高い報酬を用意しなければ獲得できないかもしれません。
ジョブ型雇用とロール型の違いを理解して自社にあった運用をしよう
この記事では、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のハイブリッド的な人事制度である、ロール型雇用の特徴を解説しました。
メンバーシップ型雇用による問題が組織内に発生している場合、ジョブ型雇用への移行を考える方も多いことでしょう。しかし、雇用形態にはジョブ型雇用だけではなく、今回紹介した「ロール型」や「タスク型」もあります。
それぞれの雇用形態の特徴を理解した上で、みなさまの会社にあった運用を考えてみてくださいね。