介護職員処遇改善計画書の書き方と記入例|加算取得のポイントを解説

介護職員処遇改善計画書は、加算制度を利用し、介護職員の待遇を改善するために必須な書類です。適切な計画書作成は、職員の待遇改善と事業所の持続的な成長に直結します。

そこで当記事では、介護職員処遇改善計画書の効果的な作成方法と、具体的な記入例・加算取得のポイントも解説します。介護職員処遇改善を通じ、人材確保と定着率向上につながる「処遇改善の実現」を目指す場合には、ぜひ参考にしてください。

介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算は、複数の種類と要件が存在する制度です。どの加算を選択すべきか、要件を満たすにはどうすればよいのかと、頭を悩ませる人も多いでしょう。ここでは、加算の種類と要件を解説します。

介護職員処遇改善の種類と要件

介護職員処遇改善加算には、主に3種類の加算が存在します。

  • 介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)
  • 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)
  • 介護職員等ベースアップ等支援加算

上述の加算は、キャリアパス要件や職場環境等要件の充足度で区分され、それぞれ異なる要件が設定されています。

たとえば、処遇改善加算(Ⅰ)は最も要件が厳しく、加算率も高いことが特徴です。一方、(Ⅱ)や(Ⅲ)は要件が緩和されており、加算率も低くなります。

介護職員等特定処遇改善加算は、経験・技能のある介護職員の賃金改善に重点を置いた加算です。また介護職員等ベースアップ等支援加算は、基本給の引き上げに特化した加算です。

適切な加算を選択することで、効果的な職員の処遇改善が可能になります。

介護職員処遇改善加算について、詳しく知りたい場合には、以下の記事をご参照ください。

介護職員処遇改善計画書の基本

処遇改善計画書は、加算の申請をする際に不可欠な重要書類です。ここでは、介護職員処遇改善加算計画書について、目的や概要を紹介します。

介護職員処遇改善計画書の目的

介護処遇改善計画書の主な目的は、以下の通りです。

  • 1. 加算取得に向けた要件の証明
  • 2. 具体的な賃金改善計画の明示
  • 3. キャリアパス・職場環境改善の取り組みを提示
  • 4. 事業所の処遇改善に対する姿勢の表明
  • 5. 従業員への処遇改善内容の周知

上記のことから、計画書は、単なる申請書類を超えた「重要な役割を果たすもの」だといえます。処遇改善に対する明確な意思表示であるとともに、従業員とのコミュニケーションツールとしても機能するからです。

計画書には具体的な賃金改善やキャリアパスの内容が記載されており、従業員と共有することで、「処遇改善の具体的な内容」や「将来の展望」を明確に伝えられるでしょう。計画書の作成過程で、従業員の意見を取り入れれば、双方向のコミュニケーションも促進されます。

記載項目の概要

処遇改善計画書に記載すべき主な項目は、以下の通りです。

【賃金改善の内容

具体的な改善方法(基本給の引き上げ、手当の新設など)と対象者・改善額を明記

【キャリアパス要件】

昇進・昇格の基準、研修体系、資格取得支援制度などを記載

【職場環境等要件】

労働時間の短縮策・有給休暇取得促進の取り組み・福利厚生の充実など、働きやすい環境づくりの計画を示す

【見える化の取り組み】

情報公開の方法(ホームページ、広報誌など)を具体的に記述

各項目について、具体的かつ実現可能な計画を立案し、明確に記載することが重要です。適切に記載することで、事業所の処遇改善に対する真摯な姿勢を示すとともに、従業員の意欲向上や組織の継続的な発展につながる道筋を明確にできます。

(※正確な記載項目は、各年度の厚生労働省の通知に定められているため、確認が必要です。)

処遇改善加算_計画書の作成手順

効果的な処遇改善計画書を作成するには、手順に従って進めることが大切です。以下のステップを踏むことで、実行力のある計画書を作成できるでしょう。

1、基本情報シートの作成

処遇改善計画書作成の第一歩は、基本情報シートの作成です。

基本シートに記入した情報は、計画書全体のベースになることから、正確さが求められます。基本シートには、事業者と加算対象事業所の詳細情報について、以下のような項目を記入します。

  • 法人名
  • 代表者名
  • 事業所名
  • 所在地
  • 介護保険事業所番号

また、加算区分(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の種別)の選択や、連絡先(担当者名・電話番号・メールアドレス)の記入も重要です。事業所番号や加算区分について、誤りがないよう細心の注意を払いましょう。

2、個表の作成

基本情報シートを作成したら、個表の作成に取り掛かります。

個表の作成では、各事業所の加算見込額を算出し記入します。主な記入項目は、以下の通りです。

  • サービス種別ごとの介護報酬総単位数
  • 加算率
  • 加算の算定見込額

加算の算定見込額では、介護報酬総単位数に加算率を乗じて計算します。複数のサービスを提供する事業所の場合には、サービスごとに計算を行ったうえで、その合計金額を記入する必要があります。

また、計算ミスは計画全体に影響をおよぼすため、複数人でのチェックがおすすめです。

3、総括表の作成

総括表は、「賃金改善計画」「キャリアパス要件」「職場環境等要件」について、具体的に記入する重要な部分です。処遇改善計画の核心に該当することから、慎重に作成し、組織の実態と目標を適切に反映させる必要があります。

また、総括表の「賃金改善計画」「キャリアパス要件」「職場環境等要件」に記載する主な項目は、以下の通りです。

【賃金改善計画】

対象者と人数・改善内容と金額・実施期間を明記

【キャリアパス要件】

職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系、資質向上のための計画的な研修実施を記載

【職場環境等要件】

職場環境の改善や労働時間・休暇制度の充実等の取り組みを記載

各項目には具体的かつ実現可能な内容を記入し、加算要件の充足を明確に示すことが重要です。

4、提出書類の確認および提出

計画書作成の最終段階では、必要書類をそろえ、期限内に所管の自治体へ提出します。主な提出書類は、以下の通りです。

  • 処遇改善計画書(基本情報シート・個表・総括表)
  • 就業規則や賃金規程の変更案
  • キャリアパス要件等の整備状況を示す書類

提出時には、「すべての必要事項が記入されているか」「計算に誤りがないか」「添付書類に不足がないか」を確認します。

提出期限を確認し、余裕をもって提出できるかについても留意しましょう。不備があると加算が認められない可能性もあり、確認作業は注意深く行うことが大切です。提出後に自治体から問い合わせがあることも踏まえ、提出書類のコピーも保管しておくと安心です。

介護職員処遇改善計画書の各項目_記入例と注意点

ここでは、介護職員処遇改善計画書の各項目について、具体的な記入例と注意点を解説します。例を参考にしつつ、自事業所の状況に合わせた効果的な計画書を作成してください。

賃金改善の具体的内容

【記入例】

「基本給を、全職員一律で月額10,000円引き上げる。また資格手当を新設し、介護福祉士取得者に月額5,000円、実務者研修修了者に月額3,000円を支給する。」

【注意点】 

賃金改善の内容を記載する際は、「具体的な金額」と「対象者」を明確にすることが重要です。複数の改善策を組み合わせることで、職員のモチベーション向上もはかれるでしょう。

上述の記入例のように、「基本給の引き上げ」と「資格手当の新設」を組み合わせるなどの工夫も効果的です。ただし、既存の給与体系との整合性を確認したうえで、実現可能な金額設定を心がけることが大切です。

キャリアパスに関する要件

【記入例】

 「1. 経験年数と能力に応じた5段階の職位を設定し、各職位の役割・責任を明確化する。

  2. 年2回の全体研修と月1回の職種別研修を実施し、職員の資質向上をはかる。

  3. 資格取得支援制度を設け、受験料の全額補助と合格祝い金を支給する。」

【注意点】 

キャリアパス要件を記載する際は、「具体的な職位」や「研修内容」を示すことが重要です。実現可能な研修計画を立て、資格取得支援については、具体的な金額や条件を明記しましょう。また、キャリアアップの道筋が明確になるよう工夫することで、職員の将来的な展望を示せます。

これらの点に注意しながら、実現可能で効果的なキャリアパス制度を設計し、職員の成長と組織の発展につながる計画を立案しましょう。

職場環境等要件の取り組み

【記入例】

 「1. ノー残業デーを週1回設定し、労働時間の短縮をはかる。

  2. 有給休暇の取得率向上のため、計画的付与制度を導入する。 

  3. 職員の健康管理のため、年1回の人間ドック受診を全額補助する。」

【注意点】

職場環境等要件の取り組みを記載する際は、「具体的な実施頻度」や「方法」を示すことが重要です。職員のニーズが反映された取り組みを選択し、働きやすい環境づくりを目指しましょう。

ただしコスト面も考慮し、持続可能な施策を盛り込むよう、注意が必要です。既存の制度との整合性を確認し、矛盾がないようにすることも大切です。実効性のある職場環境改善計画を立案し、職員の満足度向上と組織の活性化につなげていきましょう。

見える化の取り組み

見える化の取り組みは、計画書の必須項目ではありませんが、処遇改善の透明性と信頼性を高めるうえで重要な項目です。そのため、できる限り記載をおすすめします。

【記入例】 

「1. 事業所のホームページに処遇改善の取り組み内容を掲載し、定期的に更新する。 

 2. 年4回発行の広報誌で、処遇改善の進捗状況を報告する。 

 3. 求人情報に処遇改善の具体的な内容を明記し、求職者への情報提供を行う。」

【注意点】

情報公表の具体的な方法と頻度を明記し、「外部への公表」と「内部への周知」の両面を考慮しましょう。定期的な更新計画を立て、最新の情報を常に提供できるよう心がけます。

ただし、個人情報の取り扱いには注意が必要です。

介護職員処遇改善でよくある質問と回答

つづいて、処遇改善計画書の作成や実施に関して、よくある質問と回答をQ&A形式で紹介します。Q&Aの情報を参考に、スムーズな計画作成と実施を実現してください。

計画書作成時の疑問点

まずは、計画書作成時によくある質問と回答について紹介します。

Q1、計画書の提出期限はいつですか?

A1:提出期限は都道府県によって異なりますが、一般的には「加算の適用を受けたい年度の前年度2月末頃」が多いです。ただし、年度途中からの加算取得を希望する場合は、「各月の末日まで」に提出する必要があります。詳細は、所管の自治体に確認してください。

Q2、加算額の使途制限はありますか?

A2:加算額は、原則として介護職員の処遇改善に充てる必要があります。具体的には、「基本給の引き上げ」「手当の新設・拡充」「賞与の増額」などです。ただし、一部を介護職員以外の職員の処遇改善に充てることも可能です。使途については計画書に明記し、適切に管理・報告することが求められます。

実施時の注意点

つづいて、計画の実施時によくある質問と回答について紹介します。

Q3、計画変更の手続きを教えてください。

A3:計画変更が必要な場合は、変更内容に応じて以下の手続きを行います。

1. 軽微な変更:事業年度終了後の実績報告時に変更内容を記載

2. 重大な変更:変更が生じる前に変更届を提出

重大な変更には、「加算額の大幅な増減」「賃金改善方法の変更」などが含まれます。変更の程度が不明な場合には、事前に所管の自治体に相談するとよいでしょう。

Q4、未達成時の対応はどのようになりますか?

A4:計画した賃金改善が未達成の場合、以下の対応が必要です。

1. 未達成の理由を明確にし、実績報告書に記載する

2. 未使用額がある場合は、次年度の賃金改善に充当する計画を立てる

3. 継続的に未達成がつづく場合、加算の返還を求められる可能性がある

未達成を防ぐため、実現可能な計画を立て、定期的に進捗を確認することが重要です。

処遇改善加算における人事評価システムの活用

処遇改善計画と人事評価システムの連携は、効果的な職員の処遇改善と組織の成長を実現する鍵だといえます。以下では、処遇改善計画と人事評価システムの連携方法と、おすすめのシステムについて解説します。

処遇改善計画と人事評価の連携

処遇改善計画と人事評価システムの連携は、客観的な評価基準に基づいた処遇改善により、職員間の不公平感を軽減し、努力が報われる仕組みを構築できます。

そのため、「公平性の向上」「モチベーションアップ」「キャリアパスの明確化」など、多くの効果をもたらすでしょう。

また評価結果と連動したキャリアアップの道筋を示すことで、職員の長期的な成長を支援できます。連携を成功させたい場合には、以下のポイントを意識することが大切です。

  • 評価項目と処遇改善の内容を整合させる
  • 定期的な見直しを行う
  • 職員への丁寧な説明とフィードバック

上述の取り組みにより、職員の理解と納得を得ながら、効果的な処遇改善を実現できるでしょう。

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人事評価システムを導入して処遇改善を加速させよう

介護職員処遇改善計画書の適切な作成と運用は、介護事業所の人材確保と定着率向上に不可欠です。当記事で解説した各ポイントを押さえつつ、人事評価システムとの連携をはかることで、より効果的な処遇改善を実現できます。

介護業界に特化したシステム「スマイル評価+制度構築」の導入は、処遇改善の取り組みを大きく前進させる可能性も秘めています。職員一人ひとりの成長と組織の質向上を両立させ、明るい未来を築きたい場合には、ぜひ「スマイル評価+制度構築」をご検討ください。

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