介護現場で事故が発生した場合には、事故報告書の作成が義務づけられています。重要な書類であるものの、書き方に不安を覚える人は多いでしょう。事故報告書を作成しても、ポイントを押さえた内容でなければ意味をなさず、さらには指摘の対象になるかもしれません。
そこで今回は、介護現場での事故報告書の書き方について、押さえるべきポイントを解説します。例文も紹介するので、事故報告書作成について迷いがある場合には、ぜひ当記事をお役立てください。
目次
介護で必要な事故報告書とは?
介護での事故報告書とは、介護事故が発生したときに、その内容を行政に伝えるための重要書類です。書類内には、以下などを記載します。
- 事故内容
- 発生時の対応
- 発生後の状況
- 事故の原因
- 再発防止策
事故報告書の作成および提出は義務であるため、万が一提出しなければ、行政指導の対象になる可能性などが危惧されます。とくに悪質と判断されれば、営業停止や介護事業の取り消しなども考えられるでしょう。
事故報告書を作成する目的
事故報告書を作成する目的には、どういったものがあるのでしょうか?主な目的は以下の通りです。
再発防止のため
事故報告書の作成は、事故の再発防止に役立ちます。事故が発生した場合には、再発を防止しなければなりません。再発防止には、事故原因の把握・発生に至った経緯・再発防止策などを把握することが不可欠です。こうした内容を事故報告書に明記し、スタッフ全員で客観的に見直すことで、再発防止につながります。
また事故発生時は、忙しく動き回ったり慌てる人も多いでしょう。落ち着いて事故報告書を作成することによって、冷静に状況分析ができます。
事故の隠蔽を防ぐ
大きな事故が発生すれば、誰しも事実を隠したくなるものです。しかし事故の隠蔽があれば、「新たな事故が発生する可能性」や「利用者の家族からの訴訟」など、二次的な被害や苦情につながりかねません。二次的な惨事を防止する意味でも、事故の隠蔽を防ぐことは大切です。
事故報告書の作成を義務づければ、事故発生の事実を報告することになるため、事故の隠蔽防止に役立ちます。事故の隠蔽を防ぐのは、事務所およびスタッフを、さらなるマイナスな出来事から守る意味合いもあるでしょう。
関係者への対応を周知する
事故報告書は、関係者への対応を周知することにも有効です。同じ環境で働いていれば、今後ほかのスタッフが「事故の当事者」になる可能性もあります。
事故の詳細を共有していなければ、新たな事故が発生するのも時間の問題です。事故報告書の作成で関係者に「状況・原因・対応策」などを共有すれば、新たな事故の発生を防げる可能性が高まります。事故報告書を活用し、事故の再発防止に向けたミーティングなども実施するとよいでしょう。
事故報告書の作成が必要なタイミング・提出期限など
ここでは、事故報告書の作成が必要なタイミングや提出期限について解説します。作成タイミングを知らず報告書作成ができなかった場合や、提出期限を守らなかったケースでは、なんらかの指摘や指導が入る可能性があります。そのため、事故報告書の作成が必要なタイミングや提出期限は、正確な内容の把握が大切です。
事故報告書の作成が必要なタイミング
事故報告書の作成が必要となるタイミングは、以下の通りです。
- 死亡事故が発生した
- 医師の診断を受けた結果、投薬やなんらかの治療を要する事故が発生した
自治体によっては、上記以外の事故も報告対象になるため、別途確認するとよいでしょう。
事故報告書の提出期限(事故発生から5日以内)
事故報告書の提出期限は、事故が発生してから5日以内です。
とはいえ、発生から5日ほどでは、「原因を分析しきれない」や「事故防止に対する対処方法が確立されていない」といった事態が考えられるでしょう。未決定の事項がある場合には、現状で書ける内容を記載し、第一報として5日以内に事故報告書を提出します。その後、原因や対処方法がわかれば、第二報として事故の追加報告を実施します。また、第一報・第二報ともに、原則的にメールで自治体に報告する流れです。
厚生労働省の様式を使用する
事故報告書を作成する際には、厚生労働省の様式を使用します。今までは自治体ごとに様式が異なっていましたが、令和3年から事故報告書のフォーマットは「厚生労働省の様式」に統一されました。
厚生労働省の様式ではなくとも、ポイントを押さえた様式であればよいとされているものの、特別な事情がない限り「厚生労働省の様式」の使用がベターでしょう。
事故報告書の作成で気をつけるポイント
作成した事故報告書は、事故の当事者ではない第三者がチェックします。また、事故報告書を再発防止として活用する場合にも、ほかのスタッフが内容を確認します。そのため、事故報告書の作成では、事故に関与していない第三者でも内容を理解できるよう、主観的な要素や抽象的な要素を排除することが大切です。
【主観的な要素の例】
- (×)自分としては気をつけていたつもりでした
→事故報告書は、自分の考えや感じ方を書くのではなく、客観的に書くこと(例:〇〇の確認を怠っていた)が必要です。
【抽象的な要素の例】
- (×)いつもとやり方が違っていました
→事故報告書は、第三者が読むため「何についてのやり方か?」や「違っていた部分が何なのか?」まで具体的に記す必要があります。
また説明が長文になる場合には、箇条書きで記すなど、ビジュアル面の読みやすさへの意識も必要です。
例文を紹介|介護の事故報告書でよくある内容
つづいて、介護の事故報告書でよくある内容について、3つのケースを取り上げて例文で解説します。
ケース1:異なる薬を飲ませてしまった
利用者への服薬介助の際に、誤薬をしてしまったケースの例文です。
【発生日時】
令和〇年〇月〇日 午後12時45分頃
【発生場所】
食堂ホール
【対象者】
Aさん(80歳の女性)
【事故の内容】
利用者Aさんに対し、看護師が定期的に服薬介助を行なうものの、事故発生当日は似た名前の利用者が服用している薬(下剤)を誤薬させてしまった。
【事故への対策】
同日の午後12時50分頃、間違いに気づいた看護師が、施設担当者の指示のもとかかりつけ医に電話にて状況報告する。かかりつけ医からは様子を見るように言われ、施設内のスタッフに情報が共有される。
13時頃、利用者Aさんのご家族に連絡をし、誤薬の事実および様子見である旨を伝える。
同日の夕食時から、看護師による二重チェックが実施された。
利用者Aさんの体調・排泄状況ともに目立った変化はなく、かかりつけ医に報告。その後ご家族にも状況連絡をした。
ケース2:利用者の転倒によるケガ
居室内で歩行していた利用者Bさんがつまずき、転倒したケースに対する例文です。
【発生日時】
令和〇年〇月〇日10時頃
【発生場所】
利用者Bさんの居室・103号室
【対象者】
利用者Bさん(82歳・男性)
【事故の内容】
103号室から大きな物音がしたため、スタッフが駆けつけると、ベッドサイドで仰向けに倒れるBさんを発見しました。Bさんによると、歩行時にバランスを崩して転んでしまったとのことです。
【事故への対策】
10時10分頃、看護師によるボディチェック・バイタル測定を実施したところ、右の手首に違和感があると判明。すぐにかかりつけ医に電話し、診察を受けたところ、右手首に軽い捻挫があるとわかりました。応急処置をしてもらったうえで、施設担当者の指示のもと、ご家族にも連絡をします。現場を見ても、直接的な障害物になるものは見当たらなかった。同日中に事故後カンファレンスを実施し、再発防止策をたてたうえで、Bさんのご家族にも報告しました。
ケース3:物品を損壊させてしまった
訪問介護先での排泄介助時に、利用者Cさんの眼鏡を踏み、壊してしまったケースの例文です。
【発生日時】
令和〇年〇月〇日11時頃
【発生場所】
利用者Cさんの自宅
【対象者】
利用者Cさん(90歳・女性)
【事故の内容】
Cさんの排泄介助をする際に、下に落ちていた眼鏡に気づかず、スタッフが誤って踏んでしまった。踏んだ眼鏡はゆがみ、使用できる状態ではなくなってしまった。
【事故への対策】
Cさんは「家が散らかっているから気づかなくても仕方ない。気にしないで」と言ってくださり、ご家族も「片付いてなくてごめんなさい。眼鏡のことは気にしないで」と言ってくれました。同日中に、ほかの訪問介護スタッフへも内容を周知する。
また、足元を見てから進むことを徹底するとともに、作業時に「周辺に物品がないか?」をチェックしてから作業することをルール化しました。
事故を未然に防ぐ対策が必要
事故報告書の作成では、関係者全員で原因究明や解決策を見出すなど、振り返りが必要です。日常的にコミュニケーションが取れていれば、振り返りもスムーズにいくでしょう。一方コミュニケーション不足だと、振り返りがスムーズにできず、日常的に事故が発生しやすくなります。つまり事故の防止では、日頃からコミュニケーションを意識することが大切です。
人事評価システム「スマイル評価 +モチベーションpackage」は、人事評価による環境整備はもとより、コミュニケーション活性化によるチーム力アップが期待できます。ポイント制評価であるため、スタッフ同士で、チームメイトの頑張りをポイント評価できるからです。スタッフ同士で称賛する文化が醸成され、チームの連帯感が生じて事故減少が期待できます。
事故を減らしたい場合には、介護業界からも支持を集める人事評価システム「評価ポイント」を、検討してみてはいかがでしょうか。
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