昇給制度は、人材の確保や従業員と企業のモチベーションに影響します。しかし、「どういった昇給制度が最適か」や「設計プロセスが複雑で難しい」など、悩む人も多いものです。
そこで当記事では、昇給制度の定義と種類をはじめ、最適な制度設計のコツや具体的な作成ステップを解説します。昇給制度を適切に定めたい場合や、昇給制度への理解を深めたい場合には、ぜひお役立てください。
目次
昇給制度の定義と重要性
昇給制度とは、従業員の評価結果をベースとし、給与水準を段階的に引き上げる仕組みです。適切な昇給制度の設計は、組織の目標達成に貢献します。従業員の成果と貢献度に応じ、適切な報酬を提供することで、従業員のやる気や生産性を高められます。意欲や生産性の高い従業員が増えれば、企業全体の生産性向上も期待できるでしょう。
また昇給制度は、従業員のキャリア形成の重要な要素です。従業員の成長をサポートし、将来の活躍につなげるには、昇給基準や昇進の条件など「制度設計に十分な検討」が不可欠です。
昇給制度の種類
昇給制度には、複数の種類が存在します。それぞれ特徴が異なるため、企業の目的や実情に合わせて、適切な制度を選択する必要があります。主な種類は、以下の通りです。
定期昇給
定期昇給とは、勤続年数や年齢に応じて、自動的に給与が上がる仕組みです。従業員にとって安定性があり、金額の予測がしやすいでしょう。一方で、個人の成果が反映されにくい側面も存在します。従業員のモチベーション維持や優秀人材の確保を考えると、課題があることも事実です。
業績連動型昇給
業績連動型昇給とは、個人や会社の業績にもとづき、昇給額を決定する方式です。成果主義的であり、高業績者のモチベーション向上につながりやすいでしょう。ただし、公平な評価の設定や運用が難しいという課題も見受けられます。業績連動型昇給を採択する際には、企業の方針と従業員の期待について、適切な調整が必要です。
スキル連動型昇給
スキル連動型昇給とは、従業員のスキルや能力の向上に応じて、昇給を行う制度です。職能給とも呼ばれ、従業員の成長を促進できるメリットがあるでしょう。一方で、組織に必要なスキルの多様性や客観的な評価基準の設定について、難しいという特徴があります。スキル連動型昇給を採択する際には、明確な基準を設け、従業員の納得感を得る姿勢が重要です。
ハイブリッド型昇給
ハイブリッド型昇給とは、複数の「昇給制度を組み合わせた昇給制度」です。各方式の長所を活かしつつ、短所を補完するといった利点があります。しかし、制度が複雑になりやすいといった特徴も見受けられます。ハイブリッド型昇給を導入する際には、従業員の理解を得ながら、最適なバランスを見出す必要があるでしょう。
適切な昇給制度を決める4つのコツ
昇給制度の設計を成功させるには、4つのポイントを踏まえる必要があります。意識するとよい内容は、以下の通りです。
企業の経営方針と整合させる
昇給制度を企業の経営理念や目標と一致させることで、従業員の行動を「企業の方向性」に沿わせやすくなります。従業員の昇給が企業の経営目標と連動すれば、従業員は企業の目標達成に向けて、自発的に行動しやすくなるでしょう。
また、昇給を通じて「従業員の成長」と「企業の発展」を同時に実現できるよう、制度設計を行う姿勢も不可欠です。
公平性と透明性を確保する
昇給基準を明確にし「評価プロセスを透明化」すれば、従業員の信頼を得やすく、不満や混乱の防止にもつながります。従業員が、昇給に関する基準や評価方法を理解できれば、「自身の昇給が公平に行われている」と感じるためです。
公平な評価にもとづき昇給を行うことで、従業員の納得感が得られ、組織の活性化にもつながるでしょう。
従業員のモチベーション向上につなげる
適切な昇給制度で「従業員の努力を認める」ことで、モチベーション向上と組織の活性化に寄与します。自身の頑張りが正当に評価され、成果や貢献度が給与に反映されることで、「自身の能力が認められた」と感じるからです。
公正で透明性の高い評価プロセスにもとづき、一人ひとりの実績や貢献度に応じて適切に報酬を支払うことで、モチベーション維持と向上が期待できます。
長期的な人材育成の視点で作成する
従業員の成長を支援すれば、優秀な人材の確保や、企業の理念や文化を理解した人材の育成が可能になります。「優秀な人材」や「企業を理解した人材」が増えれば、組織全体の競争力アップも期待できるでしょう。
そのため、単発的な昇給ではなく、従業員が長期的に活躍できる仕組みを検討することが大切です。適切な昇給制度の設計は、従業員のモチベーション向上と中長期的な人材育成の両面から、組織の目標達成に貢献します。
昇給制度設計のステップ
昇給制度の設計では、適切なステップを踏むことが大切です。ここでは、6つのステップを紹介します。
Step 1: 現状分析をする
昇給制度の設計では、「現行の制度における課題」や「問題点の洗い出し」から始めましょう。従業員の反応や満足度、制度の効果などを把握することで、現状を正確に分析できます。現状を正確に把握することで、望ましい昇給制度を設計する流れにつながります。
Step 2: 目的を明確にする
昇給制度は、単に従業員の給与を引き上げるだけでは意味がありません。企業の目標達成につながるよう、昇給制度を設計することが重要です。たとえば、優秀な人材の定着を目的とする場合は、能力や業績に応じた昇給制度が適切です。一方で、モチベーションアップが目的であれば、公平性や納得性も重要な要素となります。
Step 3: 評価基準を設定する
評価基準の設定は、従業員の貢献度や成果の「適切な測定」につながります。適切な評価結果に応じて昇給を実施すれば、制度への納得を得やすくなるでしょう。
適切な評価基準の設定は、人事評価の透明性を高め、組織の活性化にも寄与します。
Step 4: 昇給幅を決定する
昇給幅は、経営戦略や人材育成の方針などを総合的に踏まえ、決定します。適正水準であれば、「優秀な人材の確保」や「従業員のモチベーションアップ」が実現し、組織のパフォーマンス向上につながるでしょう。
昇給幅が市場相場と大幅に異なると、優秀な人材を確保できない可能性があるため、市場相場を意識することも重要です。
Step 5: 実施時期を検討する
昇給は、年1回の実施が一般的です。しかし、従業員のモチベーション維持を考慮すれば、半年ごとの実施も検討すべきだといえます。
一方で、頻繁な昇給は企業にとって人件費の負担増となるため、適切なタイミングを見極める必要があります。
Step 6: 制度の周知と説明を行う
従業員が制度の目的や仕組みを理解していなければ、納得感や協力を得にくく、制度の定着が困難になりやすいでしょう。
経営層から中間管理職、全従業員に至るまで、階層に応じた説明が必要です。制度を設計した経緯、評価基準や昇給幅の決定プロセスなど、制度の詳細を丁寧に説明します。
効果的な昇給制度を運用するポイント
昇給制度の運用では、3つのポイントを意識するとよいでしょう。効果的な昇給制度を運用するポイントは、以下の通りです。
公平な人事評価制度を構築する
昇給は、従業員の能力や業績を反映するものです。公平な結果を導く「人事評価制度」が存在してこそ、従業員が納得する昇給制度を用意できます。
公平な人事評価制度の構築では、評価者間における基準の統一化を図り、一貫性のある評価を実現する必要もあるでしょう。評価プロセスや結果を従業員に明示し、透明性を高めることも重要です。
見直しと改善を継続する
企業環境や従業員のニーズは絶えず変化するため、当初設計した昇給制度が、時間とともに適切でなくなるケースも見受けられます。そのため、昇給制度の定期的な見直しと継続的な改善が不可欠です。昇給制度を見直す際には、昇給制度と密接に関わる「人事評価制度」の見直しも不要だといえます、
昇給制度の効果を定期的に検証し、課題や改善点を把握することで、常に最適な制度を維持できるでしょう。
定期的なフィードバックを行う
従業員の成長と組織の活性化には、評価結果のみならず、背景にある要因や具体的な改善点を話し合う機会が不可欠です。従業員と個別に面談し、評価結果の理由・今後の目標・キャリア開発などを話し合えば納得感と成長意欲を高めやすくなります。
フィードバックの際には、具体的な改善策や支援策を提案することも重要です。
昇給制度と人事評価システムを連携する重要性
昇給制度と人事評価システムは、連携することで、評価結果を「昇給に反映」できます。シーグリーンの『人事評価構築パッケージ』は、評価結果を昇給に反映するツールとしておすすめです。
同パッケージは、昇給制度の基盤ともいえる「人事評価制度」について、構築から運用サポートまで対応します。専門的な知識がなくても安心です。
パッケージ内に含まれる、『ヒョーカクラウド(人事評価システム)』では、「昇給・賞与シミュレーション」機能を搭載しています。人事評価の結果を基に、従業員の昇給額や賞与額をシミュレーションできることが特徴です。多様なシナリオを試すことで、最適な昇給制度を設計できるでしょう。昇給基準サンプルも用意しており、プロ目線で最適な昇給基準の設計をサポートします。
効果的な昇給制度の構築に向けて
効果的な昇給制度を用意すれば、従業員のモチベーション向上やスキル育成にもつながり、組織全体の生産性アップにも直結するでしょう。
従業員の成果や貢献度を昇給に反映するには、ベースとなる「適切な人事評価制度」が必要です。『人事評価構築パッケージ』や『ヒョーカクラウド』を活用すれば、適切な人事評価制度を用意したうえで、効果的な昇給制度を設計できます。適切な昇給制度を導入し、企業の持続的発展を考える場合には、シーグリーンの『人事評価構築パッケージ』『ヒョーカクラウド』をご検討ください。
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