病院や介護職の場合にも、人事考課の見直しは欠かせません。
なぜなら、人事考課は職員の能力、意欲、成績などを多角的に評価するため、正しく適切な内容が求められるからです。とは言え、しっかりと見直しができていないと感じるケースも、多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、病院や介護職に焦点をあて、人事考課を見直す際のポイントを解説します。
人事考課の例文も紹介するため、実際の運用でも参考にしてください。
目次
病院や介護職にも人事考課が必要な理由とは?
なぜ病院や介護職にも、人事考課は必要なのでしょうか。
主な理由は、以下の通りです。
離職率の低下につながる
医療機関や介護職は、慢性的な人手不足です。
また新型コロナウイルスの影響により、人手不足に拍車がかかり、従来よりも人手不足に悩む機関は多く見受けられます。こうした状況下で、人事考課も不透明・不公平な内容であれば、離職したいと思うのは当然です。
そのため、曖昧な人事考課は改訂の必要があります。
人事考課を適切に見直すと、内容が透明かつ公平になり、従業員の納得度も高まります。
納得度の高い人事考課は、モチベーションやエンゲージメントアップにもつながるため、離職率の低下に直結する点も特徴です。
コミュニケーションのきっかけになる
病院や介護職は、24時間体制でシフト勤務なケースも多く、固定制の仕事と比較すると「同じメンバーと顔を合わせる機会が少ない」と言えます。
同じメンバーと顔を合わせる機会が少ないと、コミュニケーションが希薄になりがちです。コミュニケーション不足は、以下のような影響を与えます。
・報連相が不足し、ミスが多くなる
・組織内の信頼関係が生まれにくい
・職場環境が悪化する
とくに病院や介護職では、患者や利用者を相手にするため、ミスが許されない場面も多いです。また職場環境が悪化し、信頼関係が生まれにくい組織では、患者や利用者への対応時に余裕がなくなりがちです。
人事考課を適切に実施すると、「目標設定時のすり合わせ」や「目標の達成状況の確認」などが必要になるため、必然的にコミュニケーションを取ることになります。コミュニケーションが取れるようになると、ミスの減少や組織の活性化も可能です。
適切なキャリア形成をサポートできる
人事考課を実施すると、各自の目標設定はもちろん、目標をかなえる方法なども話し合います。話し合いで本人の希望(=目標)を知ることで、上司や会社として「どういった流れでキャリア形成をサポートするか?」を考えられます。
また適切なキャリア形成は、ただ単に働くだけでは実現できません。
「人生における目標」を念頭に置いたうえで、仕事を通じて経験を積みあげることで、適切なキャリア形成ができます。適切なキャリア形成は、自身の人生に深みを与えます。
「深みのある人生につながる仕事」は、そう簡単に辞めたいとは思わないでしょう。そのため、適切なキャリア形成のサポートは、前述の離職率の低下ともリンクします。
病院・介護職の人事考課に必要な3つの基準
病院や介護職の人事考課では、3つの基準を押さえることが大切です。
3つの基準とは、以下の通りです。
1、評価制度
病院や介護職は慢性的な人手不足なため、従業員目線で考えると「引く手あまた」だと言えます。つまり今の勤務先を辞めても、すぐに他の職場が見つかります。
そのため病院や介護職では、従業員のマイナス面に着目し評価を下げる「減点主義」はオススメできません。なぜなら、「できない部分ばかりに焦点をあて、低い評価しかされないなら他の職場で働こう」という考えになるからです。
つまり病院や介護職では、従業員のよい面に着目する「加点主義」がオススメだと言えます。
加点主義では、各自の目標を明確にしたうえで、以下の3要素に対し「できているか?」を考え、できたら加点を実施します。
【要素1:行動】
・就業規則や上司の指示を守れているか?
・果敢にチャレンジしているか?
【要素2:役割】
・マネージャーとして、部下の意識を向上できているか?
・仕事を納期までに終わらせているか?
【要素3:能力】
・現場が求める知識を持っているか?
・状況に応じ、臨機応変に対応できているか?
2、ランク制度(等級や役職)
医療機関・介護職に限らず、従業員の等級や役職を示す「ランク制度」は欠かせません。
なぜなら、等級や役職があると「自身の頑張りが目に見える」からです。
また、いくら「頑張っている」「すばらしい」と言われても、ランクが一向にあがらなければ、モチベーションは下がります。
ランクの分け方は、「等級=役職」の場合もあれば、等級が役職とイコールにならないケースもあります。
3、賃金制度
人事考課と賃金制度を直結させると、評価が給与と結びつくため、モチベーションアップにつながりやすいことが特徴です。
とくに医療従事者や介護職は引く手あまたなため、「評価が給与に結びつく組織」で働きたいと思う人も多いでしょう。
とは言え、「やりがいを重視する人」や「給与アップだけを目的として仕事に取り組む人」も出てくるため、人事考課の内容を賃金制度に還元しない選択もアリです。
その場合には、従業員に「人事考課と賃金制度を直結させない」と説明します。さらに、モチベーションをあげられる「人事考課制度」と、適切な昇給がかなう「賃金制度」をそれぞれ用意しましょう。
病院・介護職の人事考課を見直す際の【5つ】のポイント
病院や介護職の人事考課を見直す際には、ポイントを押さえることで、適切な人事考課への改善に結びつきます。
見直す際のポイントは、以下の通りです。
目的の明確化
組織の課題は多種多様です。
そのため、組織に合った目的を明確にする必要があります。
目的の明確化では、組織の置かれた立場・課題をしっかりと受けとめ、組織の発展につながる内容を定めます。目的が定まっているからこそ、組織に適した人事考課の用意が可能です。
組織に適した制度内容
人事考課を見直す場合には、組織に適した制度にする点が欠かせません。
「目的の明確化」はうまくいったものの、組織の規模や条件に合わない仕組みを導入したため、うまく機能しなかったケースは多く見受けられます。
組織に適した制度内容を用意するには、組織の「規模」や「目指す方向性」が近く、人事考課に成功している事例を参考にするのもよいでしょう。
また専用のシステムを使うと、組織に適した制度内容の用意に役立ちます。
なぜなら、さまざまな「規模感」や「方向性」の企業への導入事例があるため、自社にベストな方法を提案してくれるからです。
経営層・管理職への理解
人事考課制度は、人事担当者だけが理解しても意味がありません。
病院や介護職の場合には、院長、看護師長、施設長といった経営層・管理職への理解は必須です。
なぜなら人事考課は「全従業員に関係ある」と同時に、全関係者から正しい理解を得られてこそ、適切にすすめられるからです。
また、経営層・管理職が理解を示すことで、他の従業員に重要性を伝えられます。
情報の一元管理・共有
人事考課制度は、従業員の考課はもとより、結果のフィードバックまで一貫して行なうことが大切です。
また情報を一元管理すると、情報共有も可能になります。
情報共有の可能な状態は、スムーズな課題解決や、評価者が変わった場合にも以前と同様の考課が実現できることを意味します。
そのため人事考課の見直しでは、情報の一元管理および共有可能な点が必須です。
公平性の維持
人事考課に公平性があると、従業員の納得感が得られ、モチベーションアップにもつながります。
時間や労力をかけて人事考課の見直し&実施を行なうのに、公平性が維持できずモチベーションダウンにつながるのであれば、実施する意味がありません。
そのため、人事考課の見直しで「公平性の維持」は欠かせないと言えます。
公平性を維持するには、主観的な要素を排除し、誰でも客観的に考課が行なえる仕組みをつくる姿勢が大切です。
客観的な人事考課を行なうには、以下のポイントを意識しましょう。
ポイント1:評価基準を用意する |
指標があることで、誰が行なっても、同様の結果を導けます。 |
ポイント2:システムで管理する |
情報の一元化と共有が実現し、関係者は自由に内容を閲覧できるため、不公平な結果をつけにくくなります。 |
病院・介護職の人事考課/コメント例文を紹介
ここでは病院・介護職の人事考課について、コメント例文を紹介します。
コメントは人事考課の公平性や客観性の裏付けに欠かせないものです。そのため部下はコメントでアピールをし、上司は職員から不満が発生しないよう、注意深くコメントします。
評価される側(部下)のコメント例
病院や介護職では、患者・入居者・利用者やその家族の意見に耳を傾け、人格を尊重する点が求められます。そのため、思いやりの心を持ちながら相手の話を傾聴する姿勢が欠かせません。
また個人の目標をたてる際には、職場の目標とリンクする内容がベストです。ネガティブな表現ではなく、向上させるための努力などをそえたうえで「ポジティブ」な表現を使うとよいでしょう。
~OKな例~ 職員や患者様を問わず、自分から率先して挨拶するよう心がけています。また患者様やご家族に対し、相手の話を聞くことから始めています。 必要な際にアドバイスするものの、否定やネガティブな表現は極力使わないよう意識しているつもりです。 常にチーム全体の目標である「自発性」を身につけられるよう、他部署や他職種のメンバーにも積極的に声をかけていたので、引き続き実践したいと思います。 |
~NGな例~ 日々、多くの患者様と接するよう心がけています。とは言え、コミュニケーションに困る患者様もいるため、コミュニケーションを誰とでもうまく取れるようになりたいです。 業務は一通りのことはできていると思います。 ↓ 【解説】 「コミュニケーションに困る患者様がいる」という、ネガティブかつ相手に原因があるような表現をしています。また職場の目標と、個人の目標がリンクしていません。 |
評価する側(上司)のコメント例
病院・介護職での仕事は、管理職であれば「利益」に直結させやすいものの、管理職外であれば利益と直結させるのは難しい傾向にあります。
そのため、目標を月・週などで区切り、目標の達成可否を評価するとよいでしょう。
期待や課題もそえることで、部下の意欲に火がつきます。
また、ネガティブな表現は極力避けましょう。
~OKな例~ 多忙な中、率先して挨拶をする姿勢は好感があり、実際に他者からお褒めの言葉もいただいています。また積極的に「先輩の仕事ぶりを観察」したり、すすんで勉強会に出席し、他部署のメンバーと交流する努力も目にしています。 ただし患者様の話を聞くあまり、業務が遅くなることもあるため、メリハリをつける点も意識すると尚よいでしょう。 今後は一緒に月・週の目標をたてるので、目標を達成することも意識しつつ、患者様への声がけも引き続き頑張ってほしいです。 |
~NGな例~ 日頃から、誰に対しても積極的に挨拶をする姿勢はすばらしいです。患者様からも信頼されているものの、話を聞きすぎるあまり、業務が遅れがちな傾向にあります。 この仕事はチームで行なうのだから、もっとチームとの連携を意識してほしいです。他の職員の働きぶりをよく見て、マネできる部分はどんどん取り入れましょう。 ↓ 【解説】 「もっとチームとの連携を意識してほしいです」とネガティブな表現になっています。そのため「チームとの連携を意識すると、さらに質のよい仕事ができます」などと、言い換えるとよいでしょう。 また「(他者を)マネできる部分はどんどん取り入れましょう」と、抽象的な表現になっているため、具体例を述べることで、相手はイメージしやすくなります。 |
まとめ
病院や介護職の人事考課を見直すことで、離職率の低下や適切なキャリア形成につながります。さらに、コミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。
また人事考課の見直しでは、情報の一元管理・共有が欠かせません。
Excelや社内サーバーなどを使い、手動での一元管理・共有も可能だと言えます。しかし、管理職や人事担当者に大きな負担がかかります。またデータ更新も手動なため、ミスの発生も否定できません。
そこで専用の評価システムを使うと、データの更新も瞬時に実行できるため、担当者の負担を大幅に削減できます。
「人事評価構築パッケージ」では、データを一元管理・共有できる点はもちろん、さまざまな業界の評価に対応できる点も特徴です。またデータの分析も可能なため、人事考課を見直す際に過去のデータをチェックすることで、改善すべき点も見えやすくなります。
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