離職率を改善する取り組みは、各企業の課題だと言えます。しかし、人材の流出が抑えられない企業も数多く見受けられます。
そこで当記事では、離職率改善の成功事例を紹介するとともに、離職率が低い企業の共通点を紹介します。
離職率改善を目指す場合には、ぜひお役立てください。
離職率が高くなる要因とは?
離職率が高くなる背景には、必ず要因があります。
多く見受けられる要因は、以下の4つです。
残業時間が多い
残業時間の多さは、労働時間の長さに匹敵します。労働時間が長くなると、心身を回復させる時間が少なくなるため、常に疲れをためた状態がつづくでしょう。
疲れをため状態がつづくと、健康を害して辞めざるを得なくなったり、企業にマイナスなイメージを持ちがちになり、やがて退職という流れにつながります。
「上司より先に帰りにくい雰囲気」や「残業をしないと評価してもらえない」といった風習がある企業は要注意です。
教育・フォロー体制が不十分
教育・フォロー体制が不十分だと、新入社員を不安にさせてしまいます。理由は以下の通りです。
・不慣れな環境下で「孤独だ」という印象を与えてしまう
・パフォーマンスを発揮させるための基礎やきっかけを与えられない
また既存社員に対しても、教育・フォロー体制が不十分だと、モチベーションを下げるきっかけになります。放置への不安を抱くとともに、教育・フォロー体制が整っている場所で働きたいという思いが生じるからです。
評価が正しく行なわれていない
上司や会社からの評価は、従業員が重視する項目の1つだと言えます。なぜなら、給与・待遇に直結するケースも多く、会社からの「期待度」や「重要度」も分かるからです。
評価結果に正しさを感じられず、不公平さを感じると、会社への不満がつのることから「モチベーションを下げる要因」になります。
コミュニケーションが希薄・人間関係が悪い
会社では基本的にチームで仕事を行なうため、コミュニケーションが欠かせません。それにもかかわらず、コミュニケーションが希薄であったり、チーム内や社内の人間関係が悪ければ、ストレス要因になります。
とくに上司が部下を気にかける機会が少なく、コミュニケーションをなかなか取れない場合には、会社に対する信頼の低下にもつながります。
離職率が低い企業の共通点
離職率が低く「従業員の定着率が高い」企業には共通点があります。詳細は以下の通りです。
残業時間が少ない
残業時間が少ないと、ワークライフバランスが取りやすく、自分や家族との時間にあてられます。また仕事以外の時間があることで、日々の疲れが取れやすく、精神面でのバランスも保ちやすくなるでしょう。
残業時間を少なくするには、業務量のバランスを見るほかに、会社全体として「やらなくてよい残業はしない」といった雰囲気をつくる姿勢も大事です。
教育・フォロー体制が整っている
教育・フォロー体制が整っていると、仕事の基盤をはやくつくれるため、従業員の慣れる速度がはやくなります。そのため、自信にもつながり、モチベーションも上がりやすくなる点が特徴です。
従業員の段階・状況に応じた「教育・フォロー体制」があることで、社員全体の底上げも可能になります。
また教育・フォロー体制が整っていると、コミュニケーションを取るきっかけにもなるでしょう。
コミュニケーションが活発
コミュニケーションが活発だと、上司が部下の悩みに気づきやすくなります。退職への悩みを抱えていた場合にも、状況を把握しながら、悩みによりそって解決策を見出すことも可能です。
理想は、普段から自然にコミュニケーションが取れることです。会社が積極的に「コミュニケーションが取れる仕組み」をつくることで、コミュニケーションの活性化が可能だと言えます。
人事評価制度が整っている
評価結果に公平性を示せると、モチベーションやエンゲージメントの向上につながります。こうした結果につなげるには、そもそもの基盤である「人事評価制度」を整える必要があります。
離職率が低い企業は、経営者や人事担当者が、積極的に人事評価制度を整えていることが特徴です。人事評価制度のトレンドに目を光らせつつ、自社にとってベストな内容にできるよう、常にアンテナを張って改善を目指しています。
離職率を下げるための方法
つづいて、離職率を下げるための方法を4つ紹介します。
詳細は以下の通りです。
労働時間を見直す
長時間労働は、心身のバランスを崩しやすく、退職の要因となり得ます。そのため、残業となっている要因を洗い出し、残業時間を減らす努力が必要です。
~残業時間を減らす方法(例)~
・業務量の調整
・業務効率化のために「見える化」を実施
・システム導入で作業量を減らす
・ワークライフバランス制度を取り入れる
(テレワーク、フレックス、時短など)
・上司みずからが残業をしない
教育・フォロー体制を整える
教育・フォロー体制を整えることで、従業員が業務にはやく慣れるのはもちろん、会社への信頼感・帰属意識にもつながります。
適切に教育・フォローをするには、研修・勉強会などを適宜実施するとよいでしょう。また、教育・フォローをするマネジメント担当者向けの研修・勉強会も忘れてはいけません。
さらに、1on1やMBO(目標管理制度)なども積極的に取り入れることも、教育・フォロー体制を整える鍵になります。
人事評価制度を見直す
人事評価制度を見直すことも、離職率の低下につながります。見直しで重要な内容は、以下の3点です。
・客観性
・公平性
・信頼度
上記3点を網羅する人事評価制度の導入で、従業員の納得感につながり、離職率の低下が期待できます。
また、以下のようなさまざまな評価手法をチェックしたうえで、自社に合った内容を取り入れる点もポイントです。
・360度評価
・コンピテンシー評価
・ピアボーナス
・バリュー制度など
時が経つにつれ、「企業の立場」や「取り巻く環境」も変化するため、定期的に人事評価制度を見直す点も心がけましょう。
コミュニケーションが取れる仕組みをつくる
コミュニケーションは、「今日からコミュニケーションを積極的に取ってください」と言って、いきなり取れるものではありません。
そのため、会社側が積極的に「コミュニケーションが取れる仕組み」をつくることが大切です。
~コミュニケーションが取れる仕組みの例~
・社内SNSを活用
・ピアボーナスの導入
・1on1の導入
・レクリエーションの実施
・社内報を作成
コミュニケーションが取れると、職場に活気がつき、風通しもよくなります。
実際に離職率が下がった企業の「成功事例」5つ
ここでは、実際に離職率が下がった企業について、成功事例を5つ紹介します。詳細は以下の通りです。
株式会社鳥貴族
株式会社鳥貴族では、居酒屋「鳥貴族」を展開しています。
離職率を減らすための仕組みづくりを徹底し、継続することで離職率の低下に成功しています。
残業のイメージがつく飲食業界であるものの、鳥貴族では「無断での残業」や「休日出勤」が禁止です。残業や休日出勤が発生した場合には、理由や背景を報告するのはもちろん、今後の対策も徹底して考える点も特徴です。
また入社直後に「面接官による店舗訪問」があります。目的は、新入社員のチェックです。
従来では「新入社員の管理」は、各店舗に任せる部分がありました。しかし、新入社員は直属の上司に悩みを話しにくいと考えたため、あえて店舗外の面接官がヒアリングをします。
ヒアリング内容は店舗にもフィードバックされます。
株式会社レオパレス21
株式会社レオパレス21は、日本の大手不動産会社であり、アパートの建築請負・管理やリゾート施設の運営などを展開しています。
数ある業界のなかでも、不動産業界は比較的離職率が高い傾向にあるため、レオパレス21では意識的に「離職率の低下」に取り組んできました。
たとえば、長時間労働への対策です。不動産業界では残業を強いられるケースが多いものの、同社では「働きやすさの実現に、残業時間への取り組みは欠かせない」と判断し、長時間労働の是正に踏み切りました。
労働時間を短くするには、高い生産性が必要だと考え、効果的な社員研修を実施しています。従来では研修に費用をかけず、OJTでの指導だったところ、お金をかけて社員研修を実施する体制にシフトしました。
その結果、不動産業界の新卒における平均離職率15%に対し、同社では9%前後とかなり低い数字を実現できています。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、「グループウェア」を手掛けるソフトウェア開発会社です。
同社が属するIT業界は離職率が高い傾向にあり、サイボウズ自体も、2005年には離職率が25%を超えていました。しかし2021年には、5%と大幅な離職率の低下に成功しています。
その背景には、「社員が働き方を選べる」ことにあります。昨今における多様なワークスタイルに対応すべく、選択型人事制度を導入しました。
出社はもちろん、在宅勤務なども選べるため、社員にベストな方法を選べます。その結果、各自が働きやすさを追求できました。
またコミュニケーションの活性化を目指し、部活制度を取り入れた点も特徴です。実際に導入後は、業務のスピードもアップしました。
株式会社ビッグ・エー
株式会社ビッグ・エーは、食料品や日用品を販売する「小型のハードディスカウントストア」を展開する企業です。
同社では、年間で1,000人ほどの従業員が入れ替わるにもかかわらず、新人研修に14日を費やしていました。
非効率的な状況の改善に踏み切り、新人研修のかわりに「マニュアル作成ツール」を作成し、導入を試みます。すると、研修日数が10日に減少しました。
また研修後も、マニュアルをチェックすれば不明点が解決するため、離職率の低下につながりました。
株式会社竹屋旅館
株式会社竹屋旅館では、ホテル・旅館の運営や、宿泊コンサルティング事業などを展開しています。
従来よりOJTを導入していたものの、アルバイトやパートの人員増加によって、教育の質にばらつきが出るようになりました。こうした問題を解決すべく、マニュアル作成ツールを導入した結果、人材育成の効率化に成功しました。
また面接の段階から「マニュアル」を活用したことで、従業員における「入社前後のギャップ」が少なくなり、離職率の低下につながっています。
まとめ
離職率が低い企業は、残業時間が少ない傾向にあり、教育・フォロー体制も整っています。
また人事評価制度が整っている点も特徴です。
そのため、離職率の多さで悩む場合には、残業時間の減少への取り組みはもちろん、教育・フォロー体制や人事評価制度の整備を意識すると良いでしょう。
当記事で紹介した成功事例も意識しつつ、出来ることから取り組む姿勢が大切です。
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