社員の働きを評価し、昇給や昇格につなげる人事評価制度は、人材育成や活用において非常に重要です。しかし、特に中小企業ではまだまだ導入していない企業も多くあります。
人事評価制度は、どの程度の数の中小企業が導入しているのでしょうか。また人事評価制度を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。中小企業に特化した人事評価制度導入のポイントもあわせて解説します。
目次
【人事評価制度の導入状況】他の中小企業もやってるの?
結論から言います。半数以上の中小企業が、10年以上前から人事評価制度を導入しています。
厚生労働省発表の調査「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書」によると、人数の多い企業のみならず、従業員数が19人以下の小規模な企業も、49.0%が「10年以上前から人事評価制度を導入している」と回答しています。
【参考】今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書
中小企業が人事評価制度で実現すべきは「従業員満足度の追求による業績の向上」
人事評価制度を導入し、業績の向上につなげられている会社の特徴は、「従業員満足度の追求」にあります。
業績の良い企業の特徴は、従業員満足度を追求している
厚生労働省発表の調査「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書」をもう一度見てみましょう。従業員満足度を重視している企業では、顧客満足度のみを重視している企業と比べて成長している傾向が伺えます。
【出典】今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書
たとえば売上高営業利益率において5年前~現在と比べ増加傾向がある企業の割合は、顧客満足度重視型では25.0%でした。
しかし従業員・顧客満足度重視型では31.1%、従業員満足度重視型では42.6%と、顧客満足度重視型よりも高い割合を示しています。
売上高の水準の比較では、顧客満足度重視型では48.2%でしたが、従業員・顧客満足度重視型では57.1%、従業員満足度重視型では57.2%という結果でした。
このように、従業員満足度を重視する企業は、そうでない企業と比べて業績が伸びやすいのです。
従業員満足度の向上がサービスや仕事の質を押し上げる
なぜ従業員満足度の追求が業績の向上につながるのでしょうか。
企業の持つ資源のことを「ヒト・モノ・カネ」と表現するように、人材は企業の運営において大きな影響を与えます。企業の業績を支えているのは、従業員一人ひとりの努力です。したがって、企業が高い業績を上げるためには、社員のモチベーションを高め、持つ才能や能力を遺憾なく発揮することが重要なのです。
そして従業員満足度の向上は、社員のモチベーションを高め、サービスや仕事の質を向上する効果があると考えられています。そのため、従業員の満足度向上は、業績の向上にもつながります。
ほとんどの規模の企業で従業員満足度を重視していない
では、どの程度の企業が従業員満足度を重視しているのでしょうか。
従業員規模別の従業員・顧客満足度重視の割合を見てみます。
【出典】今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書
1,000人以上の規模の企業では顧客満足度重視が36.5%、両方は31.7%、従業員満足度重視は11.1%となっています。それ以下の規模の企業では、従業員満足度を重視する企業の割合が、それ以外の企業の割合を下回る結果となっています。
業績の向上と相関関係がある従業員満足度の重視は、多くの企業ができていないことでもあります。そのため、従業員満足度を重視することは、それ自体が他社との差別化につながると考えられます。
従業員満足度は人事評価制度を使って高めることができる
人事評価制度を正しく導入できれば、従業員満足度を大きく高めることができます。「自分の努力や成果を正当に評価してもらえる」と信じられるからこそ、社員は会社に満足し、安心して仕事に打ち込めるからです。
中小企業における人事評価制度の作り方とは
人事評価制度を実際に導入するための手順を説明します。
プロジェクトチームをつくる
人事評価制度の構築のために、社内でプロジェクトチームをつくります。チームメンバーは人事部内だけでなく、多様な社員により構成されることが望ましいです。なぜなら、社長や一部の役職者だけの価値観では社員を納得させることができないからです。
事業戦略や計画を確認する
人事評価に限らずすべての新制度構築は、企業目標の達成や事業戦略の実現のためにあります。そのため、新しく策定する人事評価制度と、事業戦略や計画の間に一貫性が取れてなければなりません。
どのような人材を育成・獲得していくか考える
会社の方向性や課題を理解すれば、自ずとどのような人事評価制度が必要か、その姿が見えてきます。経営理念や企業目標、事業戦略や経営計画から、求められる人材像を描き、具体化します。
評価基準と評価項目を決める
理想とする人材像を描けたら、何をどのように評価するのかを考えていきます。
評価基準は「業績評価」、「能力評価」、「情意評価」の3種類が一般的です。
業績評価とは、その名の通り一定期間中にどの程度業績を上げたかについて評価します。特に営業部門のように、活動と業績が直結しやすい部門で好まれます。一方、管理部門のような業績に直結する評価がしづらい部門もあります。しかし「業務時間の削減」「クレーム数の減少」といった定量的な目標を立て取り組めば、間接部門においても業績評価を実施することは可能です。
能力評価とは、社員の持つ能力やスキルを評価する方法です。一般的にスキルを数値で評価した上で、その数値を伸ばすための施策を検討し、実施していきます。情意評価は、仕事への取り組み姿勢ややる気といった情緒的な領域を評価します。
評価基準が決まったら、次は評価項目を設定しましょう。プロジェクトチームによる価値観の共有も、項目の策定時に必要となります。
評価方法を決める
いつ誰が、どのように評価をするのかを決めていきます。面談の時期や方法についても定めていきます。
中小企業の人事評価制度のポイント3点
中小企業において人事評価制度を導入するポイントは、以下3点です。
・運用をシンプル・簡単にする
・「査定」の色を弱める
・1on1ミーティングからはじめる
運用をシンプル・簡単にする
最初は社員全員がわかりやすい、シンプルなやり方ではじめましょう。
「人事評価制度の作り方」を調べると、高度なテクニックや理論が紹介されていますが、最初から複雑な運用をはじめると従業員がついていけません。
「査定」のためだけはNG
人数の少ない中小企業で新しく人事評価制度をはじめたり、刷新したりする場合の注意事項は「査定」の色を弱めることです。人事評価制度とは似て異なり「査定」は処遇を決めるために行う意味合いが強いものです。
そのため査定の色が強いと社員間でギスギスしてしまったり、社員反発にあったりする可能性があります。
それよりも自己実現しやすくなる、能力が伸びやすくなるなどの、従業員側のメリットを大きく押し出すことが大事です。具体的には「社員に人事評価制度を理解してもらう」「管理職が人事評価制度のメリットを理解する」「部下との対話の比重を高める」がオススメです。
1on1ミーティングからはじめる
いきなり評価制度を導入するよりも、まずは人材育成が必要な場合もあります。その時は、上司と部下の関係性構築に効果がある1on1ミーティングからはじめることが良いでしょう。
評価面談が「目標は進んでいるか?」という上司主導の一方的なコミュニケーションであるのに対し、1on1ミーティングでは部下主導で上司と対話的なコミュニケーションを行います。
まずは「評価しなければいけない」と慌てて人事評価制度を導入する前に、1on1ミーティングなど、評価や査定を伴わない人材育成手法などから着手しても良いかもしれません。
【関連】1on1ミーティングは、どんなテーマで話せばよい? 具体例9つを紹介 | ヒョーカラボ
人事評価制度はまず身の丈にあった導入から
自社に最適な人事評価制度の導入のために
以上、中小企業向けに人事評価制度の導入について解説しました。
人事評価制度の目的は従業員にとって、自己実現をしやすくする、能力を伸ばしやすくすることです。人事評価制度の導入にあたっては、運用がシンプルであってわかりやすいことが重要です。
これらのポイントを押さえているのが、シーグリーンが提供する『人事評価構築パッケージ』です。
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業績向上や他社との差別化を図るためにも、ぜひ人事評価制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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