組織が崩壊すると、チームとしてうまく機能せず、運営も適切にできなくなります。組織崩壊は小さな部分からはじまり、やがて修復不可能なレベルまで達することもあるでしょう。完全に崩壊してからの立て直しは、容易なことではありません。そのため、組織崩壊の前兆が見えたら、少しでも早い段階で対処する必要があるでしょう。
そこで当記事では、組織が崩壊するプロセスを解説すると同時に、危険な兆候や事例についても紹介します。
組織崩壊とは?
組織崩壊とは、企業や部署内がギスギスしており、チームとしての機能が果たせない状態を指します。組織崩壊や部署崩壊は突然発生するのではなく、最初は小さなほつれからはじまり、徐々に崩れるケースが多いでしょう。
放置をしても改善する事例は少なく、対処が遅くなるほど、問題は大きくなる傾向にあります。
組織崩壊の影響
組織崩壊が発生すると、多くの従業員はモチベーションが下がり、生産性ダウンなどが危惧されます。退職者も増える傾向にあり、残された従業員に負荷がかかることも多いでしょう。1人あたりの業務量が増えて各自のモチベーションも下がれば、ミスも増えやすくなります。
すると、商品や業務の質が低下し、十分なサービスを提供できなくなるでしょう。サービスの質が下がれば、クライアントや消費者からの信頼も低下しやすく、業績ダウンにもつながります。また組織崩壊のうわさが外部にも広まれば、優秀な人材の確保も困難になります。
組織内が崩れ「優秀な人材」も確保できなければ、さらなる組織崩壊にもつながり、最終的には企業経営ができないといった末路を迎えるでしょう。
組織崩壊のプロセス
組織崩壊は突然発生するものではなく、相応のプロセスを経て、崩壊する流れが一般的です。ここでは、組織崩壊のメカニズムを解説すべく、プロセスを順序立てて解説します。
1、危険人物の出現
なにかしらの要因によって、企業に負の影響を与える「危険人物」が出現します。
~危険人物の例~
- 採用の失敗による「悪しき影響」を与える人
- 配置ミスで危険人物と化した人
- ワンマン社長
- ハラスメントをする上司
危険人物は、自分の意思で周囲を悪い方向に導く人と、無自覚で悪い影響を与える人の2種類が存在します。イタリアの経済学者・パレートの法則によると、「全体の影響は2割の人物によるもの」とされており、負の影響を与える人物はごくわずかなものの、周囲に与える影響は大きいといえます。
2、危険人物を止められない
組織崩壊につながる危険人物を止められればよいものの、危険人物を止められないケースが多いでしょう。背景には、日本の「空気を読み合う文化」が挙げられます。以前よりもグローバル化がすすんだとはいえ、指摘したいことを相手に伝えられる人は、まだまだ少数です。
危険人物が「悪い影響を与える」とわかっていても、直接的に指摘できず、表面を取り繕うイエスマンは往々にして見受けられます。危険人物を止められないと、組織崩壊は着実にすすみます。
3、優秀な人が辞職する
組織崩壊に向けて、企業全体が悪しき雰囲気になると、最初に辞めるのは優秀な人です。優秀な人は悪い状況を察知するのも早く、仕事探しにも困らないため、転職などの行動にうつることを躊躇しません。優秀な人が辞職すれば、残された人たちに多くの負担がかかり、優秀ではない人も転職する可能性があるでしょう。外部に「人が集まらない企業だ」とうわさが流れれば、新たな人材の獲得にも苦戦する可能性があります。
また、よい影響をもたらす優秀な人が減れば、結果として「より悪い雰囲気」に組織が傾いていくでしょう。
4、仕事がまわらない
優秀な人がいなくなれば、仕事を適切にまわせる人や、効率的に業務をすすめられる人も減ってしまいます。チーム全体の効率性が低下するなか、危険人物による「さらなる非効率的な事態」の襲来も想定されるでしょう。
非効率な職場は、本来であればやる必要のない仕事も増え、残業が必須となる状況も見受けられます。残業つづきで心身共に疲弊すれば、新たな従業員の辞職も誘発する恐れがあるでしょう。
5、不信感が蔓延する
1~4のプロセスを経ると、残された従業員は「組織体制が悪化している企業」に対し、不信感を募らせる傾向にあります。生産効率の低下はもとより、陰口をたたく人が出てくるなど、人間関係にも悪い影響を与える可能性があるでしょう。
すると、「若くて将来性がある人」や「能力があり転職先に困らない人」が、次々と退職する事態も想定できます。組織崩壊への対策が講じられなければ、前述の「1~4のプロセス」を繰り返すだけであり、組織が完全に崩壊するのも時間の問題です。
職場の雰囲気を変えるために、やるべきことを知りたい人は、以下の記事もご参照ください。
組織崩壊の兆候
組織が崩壊しつつあるとき、企業内では特徴的な内容が見受けられます。組織崩壊の兆候として代表的な内容は、以下の通りです。
ハラスメントの続出
セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなど、各種のハラスメントが頻繁に行われている企業は危険です。ハラスメントは和訳すると「嫌がらせ」であり、他人の足を引っ張る行為に違いはありません。
ハラスメントが続出する理由は、職場環境の悪化により過度なストレスがかかり、他者への嫌がらせでストレスを解消しようとする人が出てくるからです。組織として成立しなくなっているため、ハラスメントを止める手段が乏しいことも原因の1つです。
過度な残業が発生
深夜になっても明かりがついたままの企業や、仕事を家に持ち帰らせる企業は、実質的な崩壊が近い可能性もあります。倒産といった目に見える崩壊に至らなくとも、精神衛生面においては、崩壊しているも同然です。
人間は、十分な休息や睡眠が確保できないと、集中力を保てません。長時間において働く必要性を説く根性論は、もはや昨今の時代下では通用しなくなっています。根性論を説くつもりはなくとも、組織崩壊によって人手が不足し、残業せざるを得ないケースも見受けられます。
マニュアルに頼る
マニュアルに頼らないと、仕事がまわらない会社は、組織崩壊に傾いている可能性があるでしょう。優秀な人材はマニュアルがなくとも、自分の頭で考え自主的に行動できます。しかし組織崩壊に向かっている会社は、優秀な人材が辞める傾向にあり、受け身の人材しか在籍しないケースも往々にして見受けられます。
マニュアルは悪いものではないものの、マニュアルに頼り切っている組織は融通がきかないため、新たな考えを受け入れるのに時間がかかるでしょう。
イエスマンの増大
イエスマンは、一見すると問題がないように見えます。しかし「マニュアル通りに行動する」や「違うと思っても【はい】しかいえない」といった観点から、長期的に捉えると、崩壊の流れを作る可能性があります。
イエスしか発言できない人が増大すれば、悪しき環境を改善するきっかけが乏しく、組織崩壊を食い止める手段やタイミングを失いがちです。
組織崩壊の事例
ここでは、実際に起きた組織崩壊の事例について解説します。実例を参考にすることで、組織崩壊を改善する必要性や、組織崩壊のデメリットなどをイメージできるでしょう。
事例1:美容ブランドA社
A社は5年間で、社員数が20人から300人にまで増えました。背景にはヒット商品の売上増があり、とにかく人員が不足しているため、少々違和感があっても人材を採用しつづけました。
社員数が100人の頃は、従業員や社内の様子を把握できていたものの、人数が増えたことで、従業員や社内の様子についても上層部が把握できない状態に。統一感なく、バラバラな状態で採用や経営をつづけた結果、商品の品質も一定のものが保てず、従業員同士のコミュニケーションもとれなくなり組織崩壊に陥ります。
結果として、300人採用したうちの4割が退職してしまいました。
A社はどうなったか?
現実から目をそむけず、失敗に至った原因を経営メンバーで話し合い、猛省しました。
その後、「人事戦略の不明確さ」や「300人規模のマネジメントに関する知識不足」に気づき、外部の知見をとり入れます。またコミュニケーションの活性化も意識した結果、現在では組織崩壊から立て直しに向かっています。
事例2:自動車メーカーB社
B社は有名な自動車メーカーだったものの、車の測定データなどを改ざんし、虚偽の報告を行い世間からの信頼を裏切りました。風通しの悪い企業体質であり、不正が日常的になっていたことが、組織崩壊につながっていたとされます。
パワハラの文化もあり、軽い処分で減給、重い処分だと懲戒解雇といった高圧的な組織体制も発覚します。上司からの人格否定発言も見受けられ、虚偽の報告をつづけていた事実も世間に知られた結果、周囲からの信頼を一気に失いました。
B社はどうなったか?
日本を代表する自動車メーカーだったB社は、売上も激減し、2024年においても多額の赤字状態です。首位からも転落し、海外からも訴訟の可能性があるなど、予断を許さない状況だといえます。
消費者やクライアントへの対応はもちろんのこと、企業内の組織体制を改善しなければ、さらなる組織崩壊も免れないでしょう。
組織崩壊の兆候が見えたら早めの対策が必要!
組織崩壊は瞬時に発生するものではなく、なにかをきっかけとし、徐々に進行する病気のようなものです。組織崩壊の兆候が見えたら、少しでも早い対策が必要です。早い段階であれば修復できる可能性があるものの、手遅れの段階まで到達したら、もはや誰も崩壊を止められないでしょう。
組織崩壊の兆候が見えたら、以下のような対策を実施することが大切です。
コミュニケーションの活性化
組織崩壊は、最初は小さなすれ違いやほつれなどからはじまり、やがて大きな問題に発展します。そのため、できるだけ早い段階で組織崩壊を防ぐことが重要です。初期の違和感を発見すべく、社内のコミュニケーションを積極的にとれる仕組みが必要だといえます。
コミュニケーションの活性化に向けた方法として、定期的な1on1の実施や、社内報の作成などが挙げられます。日ごろからコミュニケーションがとれれば、お互いを思いやる気持ちが発生し、ハラスメント防止にもつながるでしょう。
信頼関係を構築する
会社と従業員の間に信頼関係があれば、安心して働けます。また従業員が「思ったことを伝えてもよい」と思える状況まで、信頼関係を構築した状態が理想です。信頼関係は一朝一夕で構築できるものではなく、以下のような内容を、日々において積み重ねることが大切です。
- 上司が率先して挨拶・感謝の言葉を伝える
- 連携すべき内容を関係者全員に伝える
- 部下の立場になって物事を考える
- 約束を守る
信頼関係が構築できれば、無条件に従うイエスマンを減らせるため、活発な意見交換やアイデアの創出も期待できるでしょう。
マネジメント力の強化
多くの上司にマネジメント力があれば、組織崩壊には至らないといえます。組織崩壊を防ぐには、上司たちのマネジメント力を強化する必要があります。
マネジメント力を高めるには、統率力・分析力・共感力など、多岐にわたる能力が必要です。研修や勉強会での座学を行いつつ、メンター制度や1on1を実施するなど、実経験も重ねるとよいでしょう。
マネジメント力が強化され、優秀な部下が育成できれば、マニュアルに頼らない自主的な人材が増える可能性もあります。優秀な人材が増えれば、業務効率がアップし、会社全体の残業時間も減るでしょう。
人事評価制度の整備
不透明かつ不公平な人事評価体制だと、自分の頑張りを正当に評価してもらえないため、従業員の不満を募らせる原因となります。不満が増大すれば、やがて組織崩壊へとつながるでしょう。そのため、既存の人事評価制度を見直すことが重要です。
人事評価制度を適切に整備し、公平な結果を導けるようになれば、従業員のモチベーションアップが期待できます。モチベーションがアップすれば、主体的な行動につながり、生産効率も高まるでしょう。人事評価制度の結果を分析すれば、どういった部分で「組織としての綻び」が発生しているかも、クリアになります。
組織が崩壊する前に人事評価制度の整備を
組織崩壊の兆候が見えたら、できるだけ早い段階で対処する必要があります。修復不可能なレベルに達すれば、組織崩壊を止めることが困難になるでしょう。
組織の崩壊を防ぐには、人事評価制度の整備が必要です。適切な評価が実現すれば、従業員の納得度が高まり、モチベーションや定着率の向上など、組織力アップにつながります。
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