自社の成長が停滞するなど、現状の評価制度に疑問を感じた企業が、360度評価を導入する傾向にあります。
実際に360度評価の導入率は、2007年の5.2%から2018年には11.8%に増加し、新たな調査では31.4%におよびます。(※労政時報第3956号を参照)
とはいえ、360度評価を導入さえすれば現状の問題が解決するわけではありません。
適切な運用を実施してこそ、効果を実感できます。
そこで今回は、360度評価の効果的なやり方について解説します。成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
360度評価とは?
360度評価とは、評価対象者に対し、上司・部下・同僚などの関係者が多面的に評価する手法のことです。
自己評価も含む点が特徴であり、評価関係者が社外関係者におよぶケースもあります。
自己評価と第三者評価の比較によって自身の強み・弱みや、のばすべき能力や改善すべき課題がわかります。360度評価の結果を行動改善につなげることで、自身はもとより、会社の発展につながるでしょう。
360度評価のメリット・重要性とは?
360度評価を実施するメリット・重要性は、以下の通りです。
多面的な視点と公平性
360度評価は1人の視点で評価せず、さまざまな関係者の多面的な評価結果にもとづくため、評価結果の客観性があります。
1人の評価であれば、評価者の主観がダイレクトに反映しやすく、評価結果に偏りが生じがちです。
一方複数名からの評価であれば、客観性および公平性を担保しやすくなります。公平な結果は、悪い意見についても内容を受け入れやすいでしょう。
成長と開発の促進
多面的な評価は、さまざまな視点から評価できるとともに、客観的なフィードバックが可能です。
上司以外の視点からも評価されることから、評価結果を受け売れやすいといえます。
長所はもとより短所も自覚しやすくなるため、自己改善に向かうスピードが速くなります。
一人ひとりの自己改善がすすむことで、企業における成長や開発の促進にも直結します。
また、各自の強み・弱みを把握できるため、これまでの認識や教育方針を改めるきっかけにもなるでしょう。
モチベーション・パフォーマンスの向上
とくにポジティブな意見を得た場合には、チームはもとより、会社に対する信頼感も高まります。
周囲への信頼が高まれば、チームで頑張る意識が強くなり、モチベーションアップがかなうでしょう。モチベーションアップは、業務パフォーマンスも高めます。
また360度評価は、自分も「他者を評価する側」として関与できるため、自分の声が尊重される点も特徴です。
自分の声が会社への貢献につながると感じるため、こうした面からもモチベーションアップ・パフォーマンスの向上に直結します。
リーダーシップ力を育成
360度評価は、課長職や部長職といった管理職も対象です。
一部の企業では、全社員ではなく管理職のみに360度評価を実施するケースも見受けられます。
管理職は上の立場であるため、部下は率直な意見を言いにくいでしょう。しかし、匿名回答ができる360度評価では、素直な意見を言いやすくなります。
部下からの意見は、管理職の「現状のリーダーシップ力」をはかるバロメーターだといえます。
悪い意見が出てきた場合には、上司に「気づき」を与えるきっかけになります。
上司が内容を真摯に受け止め、改善の方向にすすめば、より一層リーダーシップ力を養えるでしょう。
360度評価の成功事例を紹介
つづいて、360度評価の成功事例を2つ紹介します。
360度評価を導入する際に、参考として活用できるでしょう。
事例1:管理職に360度評価を実施し、風通しがよくなったA社
部下が上司に意見を言いにくく、風通しの悪さを感じていたA社。
社内の雰囲気も悪くなり、離職率増加に悩んでいたことも実情です。
そこで、管理職を対象とした360度評価の導入を決意します。
A社では、360度評価の導入条件を、以下のように定めました。
- 報酬と直結しない
- 社内で評価結果を公表し、誰でも自由に閲覧できる仕組みにする
報酬に直結しないため、管理職も360度評価の導入を受け入れ、部下も上司に対して本音を言いやすくなりました。また全員が評価結果を見られることから、社内の透明性もアピールできます。
その結果、社内の雰囲気が改善し、離職率も低下しました。
事例2:360度評価の導入で、自己と会社の発展につなげたB社
B社は自社の発展に、評価制度に対する「納得度」と「公平性」が重要と考えます。
そこで、評価制度の納得度と公平性を高めるべく、360度評価を導入しました。
B社における360度評価の条件は、以下の通りです。
- 評価者として、上司・同僚・部下から各5名を選出
- 選ばれた人を公表せず、周囲にも口外しないよう約束させる
- 人事担当者の主観が混じらぬよう、集めたデータの集計を外部業者に委託
外部業者からもどったデータを本人にフィードバックし、自己の気づきに役立たせています。評価結果の下位20%の従業員には教育プログラムを用意するなど、手厚いフォローも特徴です。
こうした結果、B社は順調に業績をあげ、従業員と会社の発展につなげています。
効果的な360度評価のやり方
ここでは、効果的な360度評価のやり方について解説します。
詳細は以下の通りです。
全員に360度評価の実施目的を共有
従業員が「なぜ360度評価を実施するか?」を理解していないと、360度評価の実施自体が目的になってしまいます。
すると、適当に評価するなど信憑性にかけた結果が集まるため、360度評価がうまく機能しません。
また360度評価は匿名回答なので、悪い評価を書いた犯人捜しなども行なわれがちです。
実施目的を共有すれば、犯人捜しのような不毛な争いを、一定数において抑制できるでしょう。
はじめから評価結果を報酬制度と結びつけない
評価結果を報酬制度と結びつける方法もアリでしょう。
しかし、はじめから評価結果と報酬を結びつけてしまうと、日頃から360度評価を意識した行動になってしまいます。
すると、各自の持ち味をだせなかったり、パフォーマンスが落ちる原因になるでしょう。
評価結果を報酬と結びつけないことで、360度評価に協力しようという気持ちが芽生え、安心して業務を遂行できます。
評価結果を報酬制度と結びつけたい場合には、360度評価を浸透させたうえで、従業員への説明および同意が得られた段階で実施しましょう。
定期的な実施をつづける
360度評価では、自己評価と第三者からの評価を比較しつつ、「認識のズレがないか?」や「ズレの大きさ」を確認します。
また認識のズレをもとに、次回以降の360度評価を実施した際に「改善状況」をチェックすることが特徴です。そのため、1回の実施だけでは意味をなしません。
定期的な実施をつづけることで、日々の行動への意識を高められますし、業務に対する目的意識も出てくるでしょう。
1on1でのフィードバックが必須
結果の伝達だけでフィードバックがないと、従業員は今後どういった行動をとればよいかわがわかりません。
またフィードバックの場があることで、従業員が抱える「360度評価への疑問や不満」をくみとれるでしょう。
フィードバックの理想的な流れは、以下の通りです。
- 1、従業員に「自己の課題」を理解してもらう
- 2、従業員と上司で、一緒に改善策を考える
- 3、改善策をもとに、今後の展望をイメージしてもらう
とはいえ、上司が「部下と2人で改善策を考えること」がむずかしいケースもあるでしょう。
こうしたケースでは、チーム全体で「360評価の改善対策ミーティング」を開く方法があります。
同ミーティングでは、自己課題を発表し、みんなに共有しながら今後の対策方法を考えます。
360度評価を行なう際には専用ツールの活用がオススメ
360度評価を適切に行なうには、自社にあった評価制度を基盤としたうえで、360度評価に適した項目設定・運用・フィードバックがかかせません。
一連の作業は煩雑であるため、ミスなくスムーズに実施するためにも、専用ツールの活用がオススメです。
シーグリーンの「ヒョーカクラウド」を活用すれば、評価制度の構築・360度評価に適した項目設定・運用などを一貫して対応できます。360度評価にかかせないフィードバックも、分析・集計したデータを活用しながら実施できます。
360度評価を実施し、課題解決や組織の成長を促進したい企業様は、是非「ヒョーカクラウド」の導入もご検討ください。