人事評価制度は、企業の競争力と従業員のエンゲージメントに直結する重要な要素です。自社の人事評価制度をうまく起動させたい場合には、既存の成功事例を比較するとよいでしょう。
当記事では、2024年における「最新の人事評価トレンド」と「7つの注目すべき成功事例」を紹介し、効果的な評価制度の構築に役立つ実践的なアドバイスを提供します。変化する働き方や技術の進歩に対応した、最新の人事評価手法を参考にしてください。
目次
【2024年】人事評価制度のトレンドとは?
昨今の人事評価制度では、「テクノロジーの活用」「継続的な評価」「従業員のウェルビーイング」など、多角的なアプローチを重視しています。
具体的な内容は、以下の通りです。
テクノロジーの活用と客観的評価を採り入れる
昨今の人事評価制度では、最新の人事評価システムやAIなどを活用し、パフォーマンスデータの分析や予測的評価を実施する傾向にあります。
評価担当者の主観が入りにくく「客観的指標に基づく評価」を行うことで、評価結果の公平性と透明性が向上します。公平で透明度の高い人事評価制度は、従業員からの信頼獲得やモチベーションアップに寄与するでしょう。また、データ駆動型の意思決定が可能になるため、より効果的な人材育成と配置が実現します。
継続的なパフォーマンス管理を行う
年次評価から、常時フィードバックへの移行が進む点も特徴です。コロナ以降、リモートワークやハイブリッドワークの普及に伴い、場所を問わず公平に評価できる手法が重視されています。場所を問わず適切に評価できれば、タイムリーな改善や成長が可能となり、従業員の能力開発が効果的に促進されるでしょう。
また、頻繁なコミュニケーションを通じて「目標調整」や「サポート」が迅速に行えるようになり、変化の激しい環境下でも柔軟に対応できる組織づくりに貢献します。
スキルベースの評価を実践する
人事評価制度のトレンドとして、職務遂行能力に基づく評価を重視し、キャリア開発との連携を強化する点が挙げられます。つまり、スキルベースでの評価です。
たとえば「スキルマトリックスの活用」や「定期的なスキル評価」により、従業員の成長を可視化したうえで、適切な育成計画を立案します。スキルベースの評価を実践することで、個人のスキル向上と組織のニーズをマッチングさせ、効果的な人材活用が可能になるでしょう。
ウェルビーイングと包括的なアプローチ
昨今の人事評価制度では、従業員のウェルビーイングとワークライフバランスが考慮された評価を実践する傾向にあります。メンタルヘルスや生産性の観点も含め、多様性・公平性を重視することが特徴です。
ウェルビーイングと包括的なアプローチにより、持続可能な職場環境の構築と長期的な従業員の定着率向上が期待できます。また、個人の総合的な幸福度が、組織の成功につながるという認識が浸透することも事実です。
柔軟性と適応力の重視
目まぐるしく変化する環境に即し、柔軟に対応できる人事評価制度が求められています。
個人と組織のニーズに合わせた柔軟な評価アプローチにより、急速な変化にも対応できる組織力を養成します。定期的な制度の見直しや、個別の状況に応じた評価方法の調整など、柔軟性を持った運用も重要だといえます。
取り巻く環境は常に変化するため、今後も人事評価制度に「柔軟性」と「適応力」が求められるでしょう。
人事評価制度の成功事例7社を紹介
適切な人事評価制度を構築・運用するうえで、成功事例を参考にすることは大切です。以下に、革新的な人事評価制度を導入し、成功を収めている7社の事例を紹介します。
株式会社メルカリ【グレード制、成果・バリュー評価】
メルカリの人事評価制度は、「グレード」を基軸に、各個人の成果と行動の2つの観点から評価を行うことが特徴です。成果に対しては「グレードで期待する成果の達成度合い」、行動に対しては「定めるバリューを発揮し、実践できた度合い」を評価します。
特筆すべきは、バリューに基づく行動評価を重視する点であり、「バリューが高ければ成果は上がる」という前提のもとで評価が展開されます。バリューに基づく行動評価では、成果が出ていてもバリューが低いメンバーの評価は低くなり、バリューが高いメンバーは高評価になることが特徴です。
メルカリの評価制度は、組織の拡大・多様化に対応し、メンバーの納得度アップを目的とします。評価の透明性を高めることで、全メンバーに伝わりやすい制度を目指します。
サイボウズ株式会社【ノーレイティング制度】
サイボウズでは、ノーレイティング制度の導入が特徴です。制度の中心となるのは、上司と部下の定期的な1on1ミーティングであり、ミーティングを通じて継続的なフィードバックと成長支援が行われます。
ノーレイティング制度の導入によって、従業員間の競争ではなく、個人の成長に焦点を当てている点も特徴です。従業員は自身の成長目標を設定し、達成に向けて努力する過程が評価されます。また、同僚や部下からのフィードバックも重視されます。
評価期間は、半年や1年といった固定期間ではなく、プロジェクトや業務の区切りに合わせて対応。評価結果は昇給や賞与に反映されるものの、決定プロセスは従業員に開示され、透明性が確保されています。
ソニー株式会社【ジョブ型人事制度】
ソニーでは等級制度を基盤とした評価制度を導入し、「現在の役割」に応じて格付けするジョブグレード制度を展開しています。同制度は「I等級群」(インディビジュアルコントリビューター)と「M等級群」(マネジメント)の2つの等級群で構成。I等級群では個人の専門性を発揮する役割を、M等級群では組織を運営する役割を担います。社員は「その時の役割」に応じて、等級群を柔軟に行き来できることが特徴です。
評価制度では、年間個人目標の設定・期中の進捗確認・そして期末レビューを行い、より高い目標に挑戦できる仕組みを構築しています。
またソニーでは、1on1面談やキャリア面談を通じて、社員の成長とキャリア開発をサポートし、各自が専門性を磨き上げられるよう努めています。
カゴメ株式会社【KPI評価シート公開】
カゴメは、全従業員のKPI評価シートを社内で公開する、革新的な取り組みを実施しています。同制度では、期首に設定した個人目標を、社内専用ネットワークを通じて、全従業員が閲覧可能。目標設定では、「何を」「いつまでに」「どれくらいやるか」と、明確な記載が求められ、すべての目標は定量化されるか、実施の有無が判断できるように設定されています。
達成度に応じて評価が決まるため、上司の主観的な判断に左右されにくい公平な評価システムが実現。本制度の導入により、カゴメは組織全体に目標の重要性を浸透させ、目標公開による適度なプレッシャーが従業員の達成率向上につながることを期待しています。組織全体の目標意識が高まり、部門間の連携も強化されています。
富士通株式会社【パーパス・ドリブン評価】
富士通は、2022年4月から新人事制度「Fujitsu Global Career」を導入しました。同制度では、従業員が自身のパーパス(存在意義)を明確にし、主体的なキャリア形成を支援します。
評価では、従来の成果主義から「社内外での学びと経験」「組織への貢献」「事業への貢献」の3観点による多面的評価へ移行しました。富士通のパーパスである「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」と結びつき、従業員の市場価値向上とキャリア選択肢の拡大も期待できます。本制度を通じて「従業員のエンゲージメント向上」と「持続可能な社会実現」に向けたイノベーション創出を目指します。
LINEヤフー株式会社【バリュー評価】
LINEヤフー株式会社では、「プロフィット評価」と「バリュー評価」の2つの軸で、評価制度を運用することが特徴です。プロフィット評価は、設定された目標に対する達成度を評価します。一方バリュー評価は、企業理念やバリューに基づいた行動を評価する制度です。
バリュー評価の基準となるのは、LINEヤフーの企業理念「UPDATE THE WORLD」の実現に向けた行動です。同評価制度の導入により、単なる業績だけでなく、企業文化や価値観に沿った行動も重視されています。評価は半期ごとに実施され、上司・同僚・部下など多面的な視点から行われるため、公平性と客観性が確保されます。
GMOインターネットグループ株式会社【360度評価・エンゲージメントサーベイ・人材育成制度】
GMOインターネットグループ株式会社は、多面的かつ継続的な評価システムを導入し、従業員の成長と組織の発展を促進することが特徴です。同社の人事評価制度の特徴として、管理監督者(役員を含む)を対象とした360度評価が挙げられます。360度評価によって、上司・同僚・部下からの多角的な評価を通じ、リーダーシップスキルの向上と組織の課題解決を図ります。
また、毎月実施されるエンゲージメントサーベイにより、組織の状態をリアルタイムで把握するため、迅速な改善が可能です。加えて「GMOアカデミア」や「GMOすごいエンジニア支援制度」などの成長支援制度を通じ、評価結果を踏まえた具体的な能力開発の機会を提供しています。
人事評価制度の成功事例から学ぶ3つのポイント
人事評価制度の成功事例から学べる重要なポイントは、「テクノロジーの積極的活用」「柔軟性と継続性の重視」「包括的なアプローチの意識」です。3つのポイントについて、詳細は以下の通りです。
テクノロジーを積極的に活用している
成功事例では、クラウドベースの人事評価システムを導入し、データ分析なども積極的に活用しています。テクノロジーの活用によって、客観的で効率的な評価プロセスが構築され、人事部門の負担軽減だけでなく、リアルタイムでの進捗管理や多角的な評価が可能になるでしょう。
またテクノロジーの活用は、評価の透明性と公平性を高め、従業員の信頼獲得にもつながります。データ駆動型の意思決定により、的確な人材育成と配置も実現可能です。
柔軟性と継続性を重視する
成功している企業では、年次評価から常時フィードバックへの移行など、より柔軟で継続的な評価アプローチを採用する傾向にあります。柔軟性と継続性の重視によって、タイムリーな改善と成長支援が可能になり、従業員の能力開発が効果的に促進されるでしょう。
また、リモートワークにも対応した評価手法を取り入れ、場所を問わず公平な評価を実現。頻繁なコミュニケーションを通じ、目標の調整や素早い支援も可能になり、変化の激しい環境下でも、柔軟に対応できる組織づくりに貢献します。
包括的なアプローチを意識する
成功事例では、「スキル」「ウェルビーイング」「多様性」など、多角的な視点から従業員を評価し、総合的な成長を促進しています。包括的なアプローチを意識することで、従業員の全人的な成長と組織の持続的な発展が実現するでしょう。
スキルベースの評価では、職務遂行能力に基づく評価を重視し、キャリア開発との連携を強化します。また、従業員のウェルビーイングとワークライフバランスを考慮した評価を行い、メンタルヘルスや生産性の観点も含めた包括的なアプローチを採用する事例も見受けられます。
人事評価制度設計チェックリスト
ここまで紹介してきた「人事評価制度の成功事例」や「最新トレンド」を踏まえ、自社の評価制度を見直すためのチェックリストを、以下にまとめました。
チェックリストを活用することで、現状の課題を明確にし、より効果的な人事評価制度の構築に役立ちます。以下のチェックリストを用いて、チェックを入れながら、自社の評価制度を見直しましょう。
☐1. 評価基準は明確で、全従業員に周知されている
☐2. 評価プロセスは公平性と透明性を確保している
☐3. 継続的なフィードバックの仕組みがある
☐4. テクノロジーを活用している
☐5. リモート・ハイブリッドワークに対応している
☐6. 多様性を考慮している
☐7. スキルベースの評価要素を含む
☐8. 評価結果が従業員の成長やキャリア開発に活用されている
☐9. 定期的に評価制度自体の効果測定と改善を行っている
【チェック結果の判断基準】
- 7個以上該当:良好だが、さらなる改善の余地あり
- 3~5個以上該当:見直しが必要
- 0~2個該当:根本的な改革が必要
チェック結果に基づいて具体的な改善策を検討し、実行に移すことが重要です。必要に応じて、プロのアドバイスを受けるのもよいでしょう。
人事評価制度の評価手法・比較表
人事評価制度には多様な手法があり、各企業の特性や目標に合わせて選択することが重要です。以下の比較表では、代表的な評価手法のメリットとデメリット、各手法の特徴を簡潔にまとめています。自社に最適な評価手法を検討し、効果的な人事評価制度の構築に役立ててください。
評価手法 | 特徴 | メリット | デメリット |
360度評価 | 公平性が高く、盲点の発見に有効 | 多角的な評価が可能 | 評価の負担が大きい |
OKR | 組織の方向性と個人目標を連動しやすい | 目標の明確化と進捗管理が容易 | 短期的な成果に偏る可能性 |
バリュー評価 | 長期的な組織づくりに有効 | 企業文化の浸透に効果的 | 数値化がむずかしい |
ジョブ型評価 | グローバル標準に近い評価方法 | 職務と報酬の関連が明確 | 職務定義がむずかしい |
ノーレイティング | 継続的なフィードバックと成長支援に有用 | 従業員のモチベーションアップ | 高いマネジメント能力が不可欠 |
KPI評価 | 組織全体の目標意識向上に効果的 | 目標の可視化と客観的評価 | 定量化のむずかしい目標がある |
成功事例を参考にし、人事評価制度を進化させよう
適切な人事評価制度を目指す場合には、トレンドを踏まえた成功事例を参考にし、自社に合った内容を構築することが大切です。
しかし、自社に最適な評価制度を設計・運用することは容易ではありません。
シーグリーンの人事評価構築パッケージは、評価制度の構築からシステム運用までをトータルサポートし、人と組織の成長を促進します。多数の導入実績を持つシーグリーンは、業種・職種に合わせた最適な評価方法を低コストで提案します。
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