タレントマネジメントを行うには、専用のシステムやツールの導入が必要です。
この記事では、タレントマネジメントの導入を検討している方に、なぜシステムやツールが必要なのか、システムやツールの有する機能や、利用するメリット・デメリットを解説します。
目次
タレントマネジメントを行うにはシステムやツールの導入が必要
タレントマネジメントとは、従業員の持つスキルや能力を一元管理し、戦略的な人材配置や育成等を行うことで、従業員のポテンシャルを最大限発揮するための人材マネジメント手法です。
このタレントマネジメントを効果的に実施するためには、社員一人ひとりの能力や経歴、保有スキルを事細かに管理する必要があります。またこれらの社員に関する情報は、アナログの手法では管理しきれません。そのため、タレントマネジメントを行うためには、システムやツールの導入が必要です。
タレントマネジメントシステムが有する11の機能とは
それでは、タレントマネジメントを実現するためのシステムには、どのような機能が必要なのでしょうか。
ツールやシステムにもよりますが、代表的な11の機能を紹介します。
機能① タレントの情報管理、人材データベース機能
社員一人ひとりの所属、年次、スキル、能力、コンピテンシー(※)、経歴、保有資格、これまで参画したプロジェクトや評価記録などの、タレントマネジメントに必要な情報を管理し、検索・閲覧できるようにする機能です。この機能は、タレントマネジメントの最も基本的な機能だといえます。
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この機能により、「◯◯というスキルを持つ人を探したい」「◯◯さんの育成計画を考える上で現在のスキルやキャリアをチェックしたい」といった要望に対応できるようになります。
システムによっては顔写真を表示させることで、視認性を高めているものもあります。
機能② タレントの能力値評価機能
「機能① タレントの情報管理、人材データベース機能」を有効にするためには、人材の能力値やスキルなど様々なパラメータを評価し、常に最新のデータとしていく必要があります。
そのためタレントマネジメントシステムには、人材の能力値を評価し管理する機能を有しています。この機能は主に以下の2点のどちらかにより実装されています。
- タレントマネジメントシステム自体に人材の評価を行う機能を持つ
- 他のシステムやツールからデータを連係する
このうち①のケースでは、評価者の決定や差し戻しなどのワークフロー的な機能が求められます。そのためシステムやツールの選定においては、自社の運用にあう形でワークフローが実装できるか確かめるとよいでしょう。
機能③ 組織・個人の目標管理機能
タレントマネジメントに限らず目標管理(MBO)(※)の実施は、組織開発や人材開発において有効な手法です。MBOの実施には、全社目標や経営戦略に基づき各組織目標やチーム目標をブレイクダウンした上で、すべてに連動した個人目標を立てることが望ましいと考えられています。
このように全社目標と一貫した目標管理を実現し、個人の目標を立て、それが期末にどれだけ実現されているかを、効率的にチェックするためにも、MBOのシステム化は有効です。
詳細な機能としては、以下が挙げられます。
- 全社目標や経営戦略の表示機能
- マネージャによる組織目標やチーム目標の立案機能
- 社員一人ひとりの目標設定、評価機能
- 目標立案に関するワークフロー(承認・差し戻し)機能
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機能④人材の育成計画策定機能
「機能③ 組織・個人の目標管理機能」とも連動しますが、タレントマネジメントを実施する上では、以下2点を実施する必要があります。
- 組織としてあるべき人材像の具体化・数値化
- あるべき人材と現状の人材間のギャップの測定
タレントマネジメントシステムの代表的な機能に、このギャップを浮き彫りにした上で、人材の育成計画を立案・管理する機能があります。
この機能により、マネージャが部下や自身の管理するチームの育成計画を策定でき、また計画が実現されているかをチェックすることができます。
機能⑤ 面談の記録機能
上司と部下との間でMBO面談・評価面談・1on1ミーティング(※)などを行った際には、その面談時の情報を記録することが望ましいと考えられています。そしてその面談時に記録した情報は、タレントマネジメントを行う上でも貴重な情報です。
そのためタレントマネジメントシステムの中には、面談内容を記録し、使いやすい状態でアクセスできるようにする機能を有しているものもあります。
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機能⑥ 配置や配属を考えるためのシミュレーション機能
人材の育成や活用を有効に行うためには、適切な人員配置や配属の実施が必要です。そのためたタレントマネジメントシステムの中には、このような配置や配属を決める支援となるようなシミュレーションツールを有しているものもあります。
たとえば社員の配置転換、昇給や昇格をドラッグ&ドロップのような操作で簡単にシミュレーションできる機能や、人件費の上下を簡単に見積もれる機能、AIを使いレコメンドしてくれる機能などがあります。
シミュレーションにあたっては、役職や職能資格等級別など、様々な軸で人件費や人員数の将来予測をシミュレーションできるシステムもあります。
機能⑦ 次世代リーダー・次期幹部候補の管理機能
「タレントマネジメントにおけるタレントとは次世代リーダーのこと」と考える企業も多くあります。そのため、タレントマネジメントシステムの中には、企業の後継者や次世代リーダー、次期幹部候補を管理・育成することに特化した機能を有しているものもあります。
具体的には、以下のような機能があります。
- 人材データベースの中から特に次世代リーダーに該当しそうな人材を抽出し、一覧に表示した上で比較検討できるようにする
- 指定した一部の条件に該当する候補者も、適合率順にあわせて表示する
- 部署ごとの部長候補者を選定するなど、ポストごとに幹部候補者リストを作成する
- 幹部候補者に対し育成計画を策定し、進捗を把握する
機能⑧ アンケート機能
タレントマネジメントを実現する上では、社員のスキルや経歴だけではなく、従業員満足度やエンゲージメント(※)など、社員の状態を観察することも重要です。
そのため、対象の社員に対しアンケート調査を行い、集計結果をリアルタイムで表示する機能を有しているタレントマネジメントシステムもあります。
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機能⑨ ラーニングマネジメントシステム(LMS)
タレントマネジメントシステムとは人材育成のためのシステムです。
そのため、対象者に対しeラーニングや集合研修などの育成プログラムを提供し、受講履歴を管理していくような、ラーニングマネジメントシステム(LMS)としての機能を持つシステムもあります。
もしくは、他のLMSをはじめとする各種システムと連携できるような機能を持つことも一般です。
機能⑩ データ分析・レポーティング機能
多くのタレントマネジメントシステムが、管理するデータを分析したり、レポートとしてわかりやすく出力したりする機能を有しています。
タレントマネジメントシステムは、利用者の人材育成に関する意思決定をサポートするシステムです。そのため、特に視認性の高いレポーティング機能を有していることは重要です。
機能⑪ セキュリティ・アクセス制御機能
タレントマネジメントシステムは、幹部候補者の選定や異動のシミュレーションなど、機密情報を扱います。そのため多くのタレントマネジメントシステムでは、ユーザごとにアクセス制限をかけたり、情報が漏れにくくしたりなど、セキュリティのための機能やアクセス制御機能を有していることが一般的です。
タレントマネジメントシステム導入のメリット5点
ここで改めて、タレントマネジメントに関するシステムやツールを導入するメリットについて整理しましょう。
タレントマネジメントシステムを導入することで、次のようなメリットがあります。
メリット① 人材配置・配属の適正化とパフォーマンスの最大化
タレントマネジメントシステムを使うことで、人材のスキルや能力が可視化され、人材配置や配属に関するシミュレーションが行いやすくなります。これにより適材適所を実現しやすくなり、社員のパフォーマンスを最大化できます。
メリット② 異動や昇進・昇格など人事に関する業務効率化
また、異動や昇進・昇格のシミュレーションや人件費計算が行いやすくなります。これにより、人事異動を中心とする業務がスムーズになり、業務時間を削減できます。
メリット③ 計画的な採用・人材育成
スキルが可視化されることで、いつどのような人材が不足しうるか予測が立てやすくなります。これにより、採用や人材育成をより計画的に行えるようになります。
メリット④ 幹部候補者の発見、育成が容易に
次世代リーダーや次期幹部候補に絞り育成計画を立て、進捗を管理できます。これにより経営層をより計画的に採用・育成できるため、組織力の向上につながります。
メリット⑤ 社員のモチベーション、ステータスを維持・向上できる
従業員満足度や従業員エンゲージメントなどを定期的に調査することで、日々の社員一人ひとりのモチベーションや状態を把握できます。これにより、マネジメント層はモチベーションマネジメントやフォローアップをより的確なタイミングで行えるようになります。
タレントマネジメントシステムのデメリットやよくある失敗例とは
よいことずくめに見えるタレントマネジメントシステムの導入ですが、デメリットも存在します。導入の失敗例とあわせて解説します。
デメリット① 完璧を目指し頓挫しやすい
タレントマネジメントシステムで実現できることや、管理できるデータは多岐にわたります。裏を返せば、考慮すべきことが多く運用も複雑になりがちです。そのため、導入にハードルが高くなり、運用しきれず導入に失敗してしまうこともあります。
デメリット② ツール選定に失敗する
また、運用が複雑になったり、期待が膨らみすぎたりした結果、ツール選定において失敗してしまうケースも見受けられます。
具体的には会社として管理すべき項目がツールによっては管理できなかったり、求める機能がなかったり、機能はあっても操作性が難しかったりなどといったケースが考えられます。
デメリット③ システムにコストがかかる
システムの費用がかさみ、予算オーバーとなってしまうケースもあります。特にタレントマネジメントシステムは全社員を対象に実施することも多いため、従業員ライセンス数ごとの契約を行った結果、費用が莫大になることがあります。
タレントマネジメントをスモールスタートするための「スキルマップ」とは
このように、複雑なタレントマネジメントを最初から実現しようとすると、費用がかさんだり運用しきれず頓挫してしまったりする場合があります。
そのため、最初はできるだけシンプルな形で、人材のスキル管理を行うところから始めることをおすすめします。
シンプルにスキル管理を行う上で有用な手法としては、「スキルマップ」があります。
スキルマップを導入することで、育成対象者のスキルを一元化でき、計画的な育成や配置ができるようになります。
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タレントマネジメントは難しい。簡単なスキルマップから導入を検討しよう
この記事では、タレントマネジメントを実現するためのシステムやツールが有する機能、そしてシステムを利用するメリット・デメリットや注意点について解説しました。
タレントマネジメントは複雑な方法であるため、まずパイロット的にシンプルな運用で実現し、そこから発展させていくことをおすすめします。
そして、タレントマネジメントをよりシンプルな形で実施するには、「スキルマップ」の活用がおすすめです。
スキルマップの活用を通じ、スキルを一元化し、網羅的に各社員の能力値を見ながらマネジメントすしていきましょう。それがタレントマネジメントの第一歩です。
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