「心理的安全性」という言葉をご存知でしょうか。
Google社が労働変革プロジェクト「プロジェクトアリストテレス」で取り入れたことにより注目されました。
これにより、社員の生産性を高めるためには、「チームメンバーがほぼ同じ時間発言するような雰囲気が、チーム内で醸成されることが成功の鍵」という結果が得られました。
つまり、「心理的安全性」を育むことが、社員の生産性を高めることに繋がるのです。心理的安全性とは、周囲の目を気にすることなく、安心して発言や行動ができる環境のことです。
「社員の士気が下がっている」
「離職者が増えている」
こうした状況下で心理的安全性を高めると、社員のモチベーションアップや定着率向上につながります。とはいえ、心理的安全性の高め方がわからないといった声は多く聞かれます。
心理的安全性を高めるには、1on1が有効的です。
当記事では心理的安全性の高め方をはじめ、1on1をオススメする理由や押さえるべきポイントを解説します。
社員の士気アップを目指し離職者を減らしたい企業様は、ぜひ当記事を参考にしてください。
目次
心理的安全性とは
psychological safetyを和訳した「心理的安全性」。
1965年にマサチューセッツ工科大学教授である、エドガー・シャイン教授とウォレン・ベニス教授が提唱した概念です。
組織の議題を解決したり、新しい挑戦をするためには、安心して行動を変えることができると人々が感じる必要があります。
そのために必要とされるのが、心理的安全性です。
心理的安全性(サイコロジカル・セーフティ)とは、他者の反応を気にすることなく、自身の思いをオープンにできる環境のことです。
いわば「自然体でいられる環境」だといえます。
心理的安全性が高いと、社内のコミュニケーションが活発になり、新たなアイデアが生まれやすくなります。
心理的安全性が高い環境では、従業員は自分の思いをオープンにでき、否定されることはほぼありません。そのため「自分を受け入れてもらえた」と感じることから、モチベーションやエンゲージメントの向上につながります。
またチーム内での課題解決力が高まるため、生産性アップが期待できるでしょう。
モチベーションやエンゲージメントを高く保てる環境は、定着率が高い傾向にあります。
他者の視線や反応に対して羞恥心を感じたりおびえることなく、自然体の自分を出すことができる雰囲気や環境の構築をすることは、意見交換を活発化するうえで大切なポイントです。
心理的安全性を確立することで、仕事上の人格を演じるのではなく、チームメンバー全員が普段と変わらない、リラックスした状態で活動に参加することができるようになります。
更に、1999年同じマサチューセッツ工科大学の教授であるエイミー・C・エドモンドソン教授の論文では次のような紹介がされています。
心理的安全性は、チーム内で「リスクを取っても良い」とチームメンバーに共有される信念にある。
例えミスをしても、失言をしたとしても、「このチームなら大丈夫だ」という信頼関係を構築しましょう。
誰も自分のことを馬鹿にしたり罰したりしないと信じることで、アイディアを積極的に発言することができます。
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詳細はこちらチームとは
チームは、成果を生む出す最小の単位であり、多くの組織では仕事の大部分をチームによる共同作業で取り組んでいます。
従来のチームは実行志向であり、作れば売れることが分かっていたため、早く安くそしてミスなくモノ作りをすることが求められました。
しかしこれからのチームは学習志向で、何が作れるか・売れるか分からない中で、挑戦を歓迎して失敗から学んでいくことが求められます。
つまり、言われたことをやれば良かったチームから、未来に目を向け正しいことを行動しながら見つけるチームが求められるようになったのです。
心理的安全性は、チームの学習を推進するだけではなく、業績の向上や質の高い意思決定に繋がっていきます。
大切な「チームの学習」とは
組織論においては、組織を「個人」「チーム」そして「組織」の、3つのレイヤーに分けて考えます。
例え個人であったとしても、心理的に安全な場所であれば、色んなことを学ぶことができます。
しかし、個人が学習してもそれをチーム全体が学べるわけではありません。
個人が経験から学んだことを、チームの人に共有することで初めて、チーム全体が学ぶことができるようになります。
更に、チームの学びを組織全体へと展開することで、ルーチンが変わったり組織が変革されたりします。
これにより、組織が学習することができるのです。
つまり、個人の学びと学習の学びを繋ぐ要となるのがチームであり、組織の成長のためには、チームの環境が重要なポイントになるのです。
コンフリクト(衝突)とは
コンフリクト(衝突)は、「あの人嫌い」という人間関係、同一のタスクに対し物事の見方が違うタスク、「それはうちの管轄ではない」というプロセスの3つに分けることができます。
これらのコンクリフトは、チームの業績に対してネガティブな働きをすることで知られています。
しかし、心理的安全性がある時にはプラスの影響を与えてくれるのです。
ひとつの物事を多面的に検討し問題を感じる中で、チームに対して提案をすることができる「健全な衝突」があるチームは、より学びが早くなり業績の向上に繋がります。
心理的安全なチームでは、「ミスが多い」とされています。
しかしこれは、ミスをした際にきちんと申告をし、こっそりと処理をして隠したりすることがないため、ミスの回数が多く見えてしまうためです。
表面化するミスの数が多いだけであり、問題ではありません。
心理的安全性を保ったチームでは、衝突や問題が人間関係の拗れではなく、前進するための問題として扱われるため、業績にプラスの影響があるのです。
心理的安全性を確立するメリット
心理的安全性を確立すると、以下のメリットがあります。
- チーム内のコミュニケーションが円滑になる
- 業務効率があがる
- 人材のコミットメントが促進される
- 組織の学習が進む
- イノベーションを起こしやすい環境が構築される
- 不正や失敗による組織的なリスクが軽減される
特に「イノベーションを起こしやすい環境が構築される」のは、経営を考えるうえで非常に重要なポイントといえます。
イノベーションを起こすためには、多様性のある環境で活発な意見交換ができる土壌が必要不可欠です。
また、失敗の原因に気が付いた際に誰でも指摘することができることで、重大な組織的リスクを回避できる可能性が高まります。
そして、「人材のコミットメントが促進される」のは、単に業績の向上だけではありません。
コミットメントが促進されることで、帰属意識や仲間意識が生じ、結果として離職を防ぐ効果も期待できます。
心理的安全性を確立し、風通しの良い環境を構築することで、業績の向上や離職の防止など、多彩な効果が期待できるのです。
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詳細はこちら心理的安全性の高め方・ポイント
つづいて、心理的安全性の高め方やポイントを解説します。
特に、チーム内で心理的安全性を確立するためには、以下のポイントが重要です。
- チームリーダーが心理的柔軟性を持つこと
- チームメンバー全員がお互いに対して敬意や尊敬の念を抱くこと
- 間違いを認めたり、意見を言ったりしやすい環境の構築
- 「大丈夫」という信念をチーム内に共有すること
詳細は以下の通りです。
信頼関係構築に努める
1つ目は、信頼関係構築に努めることです。
他者の反応を気にせず自身の思いをオープンにできる環境は、相手に対する信頼関係があってこそ成立します。
信頼できない相手に、自分の本音は伝えられません。
そのため、部下に対して信頼関係を構築するのはもとより、チーム間での信頼関係も構築できるよう配慮しましょう。
部下に対する信頼関係構築には、「納得度の高い評価制度づくり」や「意見を否定しない」といった努力が挙げられます。またチーム間での信頼関係構築には、「社内イベントの開催」や「チームミーティング」などが挙げられます。
従業員に情報共有を心がける
2つ目は、従業員に情報共有を心がけることです。
以下のような情報を共有すると、従業員に安心感を与えられることから、心理的安全性の向上に役立ちます。
- 企業戦略
- ビジョン
- 各種ルール
人は「わからない状況」に不安を感じるものです。
情報共有によって「わからない状況」を解消できるため、安心して業務に取り組める状況がつくられます。
また周囲と同じ情報を知ることは、チームの一体感を高め、孤独感を解消することにもつながります。
情報共有をスムーズにすすめるには、「情報共有できるツールの用意」や「情報共有のルール作成(誰が、誰に、何を伝える?)」などがオススメです。
多様性を認める環境づくり
3つ目は、多様性を認める環境づくりです。
なぜなら、多様性を認める環境を用意できていると、従業員に対し「企業自体にさまざまな意見を受け入れる土台がある」と明示できるからです。
多様性を認める環境が存在すると、従業員同士(上司対部下も含む)がお互いを尊重しあう社風が形成できます。
そのため、従業員は「このような発言をすると、周囲からおかしいと思われるかも」といった不安を抱きにくくなるでしょう。また他者が自分と異なる意見をもっていても、当たり前だと思えるようになります。
多様性を認める環境づくりでは、「多様な人材に向けた評価制度の整備」や「多様性に関する研修の実施」などがオススメです。
チームリーダーへの教育
活発な議論ができる土壌を構築する際、最初に取り組みたいのがチームリーダーの意識改革です。
チームリーダーが心理的柔軟性を持っていないと、多様性のある意見を受け入れることができずに、誰もが平等に発言する環境を作るのが難しいと言えます。
そのため、心理的安全性の確立を目指す前に、チームリーダーに対して、心理的安全性の確立のメリットや目的、どんなことに気を付ければ良いかを伝えておきましょう。
またチームリーダーは、良い取り組みや発言を積極的に評価するだけではなく、例え誰かがミスをしても、それをもとにチーム全体の成長機会を創出することが大切です。
そのためにも、メンバー全員の課題や抱えている問題を理解し、適切なフィードバックとフォローを行うことが求められます。
心理的安全性の向上に1on1が役立つ理由とは?
冒頭で「心理的安全性の向上には1on1が役立つ」とお伝えしました。
なぜ心理的安全性の向上に、1on1が役立つのでしょうか?
その理由は、1on1には前述で紹介した「心理的安全性を高める要素」が存在するからです。
~心理的安全性を高める要素~ 1、信頼関係構築に努める 2、情報共有を心がける 3、多様性を認める環境づくり |
1on1とは、上司と部下が行なう1対1のミーティングです。
ミーティングでは第三者がいないことから、本音を話しやすくなります。
部下の本音に耳を傾け、否定せずに対応をすれば、信頼関係の構築に役立ちます。
否定しないで意見を聞くことで、企業に「多様性を認める環境が用意されている」ことを示せるでしょう。
また1on1の一部を「必要事項の共有」の時間として活用すれば、情報共有ができます。
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詳細はこちら心理的安全性が高まる1on1の効果的なやり方
これまでの話で、1on1は心理的安全性を高めるのに役立つことがわかりました。
とはいえ、心理的安全性の確保は容易にできるものではありません。
急に「本音を話せる環境をつくる」といっても、今までの関係性やわだかまりも考えると、難しい側面があるからです。
難しいからといって、心理的安全性が担保できないままだと、従業員のモチベーションは維持できず離職につながってしまいます。
そのため、心理的安全性の確保が難しいことを理解したうえで、1on1を実施するとよいでしょう。
以下に、心理的安全性が高まる1on1を「効果的」にすすめる方法を紹介します。
定期的な1on1の実施
1つ目は、定期的な1on1の実施です。
開催する頻度は、週1~月1が望ましいといえます。
これより短いスパンだと、上司にも部下にも負担がかかってしまうでしょう。
1on1を実施すると、従業員の本音を把握することにつながり、リアルな「心理的安全性の度合い」がわかります。
前回と今回の結果を比較することで、「心理的安全性の変化」を把握できます。すると「以前より心理的安全性が高まっているか?」がわかるでしょう。
心理的安全性が高まっていない場合には、従業員の「建前」しか聞けおらず、本音をヒアリングできていない可能性が考えられます。
本音を知るには、従業員の思いを傾聴し、話しやすい環境をつくる姿勢がかかせません。
また本音を聞けたとしても、最新の本音は適宜変化します。常にリアルな本音を聞くためにも、定期的な1on1の実施が不可欠です。
1on1の前後でパルスサーベイを実施
2つ目は、1on1の前後でパルスサーベイを実施することです。
パルスサーベイとは、短いスパンで「従業員満足度」や「心の状況」を調査する手法を指します。5~10問程度の少ない質問を用意し、対象の従業員に回答してもらいましょう。
1on1の前後でパルスサーベイを行なうと、実施前と実施後の従業員満足度を比較できることから、1on1の効果測定ができます。
1on1の効果があれば、実施前よりも実施後の従業員満足度が高まります。
一方1on1の効果がなければ、実施前と実施後の従業員満足度はかわらない、もしくは低下するでしょう。
思うような効果が出なければ、本音を話してもらえるよう、適切な対策を講じましょう。
グランドルールを設ける
3つ目は、1on1にグランドルールを設けることです。
以下のようなルールを設けると、従業員が本音を話しやすくなります。
【1on1のグランドルール(例)】 ・1on1の対話内容は評価に反映しない ・上層部に「言わないでほしい」内容があれば、その内容は伝えない ・答えたくない質問には「答えたくない」と回答してよい |
また1on1の実施目的が、あくまで双方のギャップを明確にし、働きやすい環境をつくるためである点も明示するとよいでしょう。
おわりに
組織構築を考える際、重要なポイントになるのがご紹介した「心理的安全性」の確立です。
特に、心理的安全性を高めたい場合には、1on1の実施がオススメです。また1on1の実施前後でパルスサーベイを行なうことで、1on1の効果測定ができます。
人事評価システム【ヒョーカクラウド】は、「1on1ミーティング機能」と「パルスサーベイ機能」を搭載した人事評価システムです。
人事評価システムであるため、定期的な評価の実施によって、心理的安全性の推移を総合的に判断できます。
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1on1の実施に自信がない場合や、あえて第三者を通じて本音を知りたい場合には、同社が提供する「1プロ」がオススメです。
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チーム内での信頼関係の構築や、活発な意見交換は、業務効率の向上だけではなく様々な効果が期待できます。
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