「毎日、部下と会話をしているのに、行き違いが多くある」
「部下とうまく意思疎通ができている気がしない」
「部下のことをわかっているつもりだったのに、突然の退職で寝耳に水だった」
このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないのでしょうか。職場のコミュニケーションは組織において普遍的な課題といってもよいでしょう。
昨今注目されている組織内のコミュニケーションを改善する手法のひとつに、「1on1ミーティング」があります。多くの企業が導入を始めており、HR部門における大きなトレンドといっても過言ではないでしょう。
ところで、効果の出る1on1ミーティングには、既存のコミュニケーションと比べ大きな違いがあります。
その「コミュニケーションの違い」をしっかり理解しなければ、1on1ミーティングを導入してものぞむ効果が得られないばかりか、ただいたずらに時間を浪費してしまい、職場の雰囲気が逆に険悪になってしまうことにもなりかねません。
そこで今回は、1on1ミーティングのコミュニケーションの大きな特徴と、他のビジネスコミュニケーションとの違いについて解説します。
1on1ミーティングのコミュニケーションにおける6つの特徴
1on1ミーティングには、大きく次の6つの特徴があります。
- 一対一でコミュニケーションする
- 短時間のミーティングを高頻度で開催する
- 業務に直結しない、抽象的なテーマも取り扱う
- 上司ではなく部下がコミュニケーションの主体となる
- 上司は主に聴き役。能力を引き出す
- すぐに成果が出なくてもよい
一対一でコミュニケーションする
そもそも「1on1」とは「一対一」のことです。他のビジネスミーティングでは複数人で会議を開くことが一般的ですが、1on1ミーティングでは上司と部下の一対一でコミュニケーションをとります。
短時間のミーティングを高頻度で開催する
上司と部下が一対一で行うミーティングとしては、これまでも期ごとに目標を立てる「目標設定面談」や、人事評価の結果をフィードバックする「評価面談」などがありました。これら既存の面談との違いはどこにあるのでしょうか。
その大きな違いは、時間と頻度です。目標設定面談や評価面談は概ね半期に1回程度開催し、1~2時間程度の時間をかけます。一方1on1ミーティングは、一般的に毎週から隔週ペースで開催し、その時間は15~30分程度です。
短時間のミーティングを高頻度で開催することで、率直なコミュニケーションに上司も部下も慣れ、そのときどき抱えている問題を包み隠さず議論できるようになります。
また、部下が困っている課題についてリアルタイムで解決のヒントをもらえるため、従業員満足度やエンゲージメント、エンプロイーエクスペリエンスを向上させる効果も期待できるのです。
業務に直結しない、抽象的なテーマも取り扱う
1on1ミーティングでは、他のビジネスミーティングと同様、都度テーマを取り上げ議論します。ですが、一般的なビジネスミーティングでは具体的な課題や施策について議論することが多いですが、そのテーマは具体的な業務に直結するものでなくても大丈夫です。
たとえば「最近なんとなく気になる・モヤモヤすること」や、「漠然と不安に思っていること」といったテーマで議論してもよいのです。
上司ではなく部下がコミュニケーションの主体となる
一般的なビジネスミーティングでは、会議の進行を上司が担います。ですが1on1ミーティングの場合は、コミュニケーションの主体は部下となります。部下がその会議中に取り扱うテーマを選定し、進行を担うのです。
この違いはなぜ生まれるのでしょうか。それは1on1ミーティングの大きな目的が「部下の人材育成」にあるためです。
1on1ミーティングで最も重視するのは、部下の自分で考え行動する力を伸ばすことです。業績の向上や、組織の問題解決などは、正直「二の次」で問題ありません。
そのため、最初はちぐはぐで拙い進行であっても、部下自身が進行し、会議中に取り扱う課題やテーマを選び、次のアクションを考えることが重要です。
上司は主に聴き役。部下の能力を引き出す
通常の面談では、上司が議題や進行を決め、必要に応じて意思決定を行い、部下に指示を出します。部下の足りない知識や経験を補い教える「ティーチング的なコミュニケーション」の比重が大きくなります。
ですが1on1ミーティングにおいて求められるのは、「コーチング的なコミュニケーション」です。つまり、安全な場を作り、部下の話に傾聴し、共感し、アイデアを引き出すようなコミュニケーションが重要となります。
すぐに成果が出なくてもよい
一般的なビジネスミーティングで重視するのは「成果」です。会議で重要な価値ある意思決定がなされ、業績向上につながることが重視されます。
1on1ミーティングでも最終的には業績向上につながることが重要ですが、長期戦を想定しています。
1on1ミーティングを繰り返し開催し、組織の風通しがよくなり、部下が自分で意思決定できるようになった末の、結果的な業績向上を描いているのです。
そのため、1on1ミーティングを導入する上では、短期的な成果を求めてはいけません。長期的な取り組みとなることを覚悟してください。
1on1ミーティングの導入について相談する
詳細はこちら良好な1on1ミーティングのコミュニケーションによる3つの効果
ここまでは、1on1ミーティングと通常のビジネスミーティングとの違いや特徴について解説してきました。
ここからは、1on1ミーティングで良好なコミュニケーションが行えた場合、結果的に組織にどのような影響があるのかについて、これまで紹介した内容も含め解説します。
1on1ミーティングにおけるコミュニケーションを通じ、以下3つの効果が得られます。
- コミュニケーション不足を改善することで、社内の問題が解消していく
- 上司が現場全体のリアルを把握でき、トラブルを未然に防げるようになる
- 部下が積極的に仕事に挑戦できるようになる
コミュニケーション不足を改善することで、社内の問題が解消していく
組織においてコミュニケーションが不足している場合、次のような悪影響が発生します。
・優秀な人材が人間関係の問題で辞めていく
・部署全体に活気がなく、目の前の仕事をこなすだけになっている
・上司のアドバイスを叱責と受け取る社員がいる
・自発的に考えて仕事に取り組む社員が育たない
・発言を求めても無難な内容しかいわない
・上司の陰口を部下同士で言い合っている
これらを改善していくためのポイントは、上司と部下での良好なコミュニケーションを繰り返すことにあります。
コミュニケーションの基本は信頼関係です。上司が部下自身のことをしっかり受け止め、理解してくれるという信頼があってはじめて、組織内のコミュニケーションが活性化し、職場全体の雰囲気が改善されます。
1on1ミーティングで良好なコミュニケーションがとれれば、上司と部下の間の信頼関係が急速に強化されていきます。結果的に職場の雰囲気もよくなり、社内のさまざまな問題が解決されていくのです。
上司が現場全体のリアルを把握でき、相談しやすい関係でトラブルを未然に防ぐ
上司は一般的に忙しい立場にあります。通常業務中に部下の一人一人とコミュニケーションをとることは中々難しいのではないでしょうか。
また、上司と部下にも相性があるため、個別に呼び出したり特別な面談を開いたりすることに対し、部下から敬遠されてしまう可能性もあります。
しかし1on1ミーティングでは、全ての部下と公平に話をする時間が持てます。プロジェクトの状況について聴くことで、想定できるトラブルを未然に防ぐことができるようになります。
また全ての部下から話を聞くことで、チームの全体の状況をリアルに把握することができます。部下一人一人の状況を理解し、現場のリアルな姿を把握することで、仕事のパフォーマンス向上に向けた施策を考えることができるだけでなく、新たな仕事を適切に配分することもできるようになるのです。
また、業務以外での部下の状況も知ることができるため、部下にとって働きやすい職場環境を考えることができ、結果として離職率低下にもつながります。
さらに1on1ミーティングを重ねると、日頃から上司に相談をしやすくなります。結果として部下が一人で悩みを溜め込まずにすむようにもなるのです。
壁打ち効果と上司のフィードバックで、部下は積極的に仕事に挑戦できる
部下から上司に相談をしたりアドバイスを求めたりすることは、上司が思っている以上に勇気がいるものです。些細な会話をすることにさえ躊躇する部下もいるでしょう。
積極的な部下であっても、家庭の事情による業務内容の変更希望、といった個人的な相談は人前ではしにくいものです。しかし、1on1ミーティングでは他の社員に気兼ねすることなく上司に相談できます。
1on1ミーティングは部下が話したいことを話せる場です。また、口に出して話すことで自分の考えていることが明確になり、解決策を自ら見つけることができる「壁打ち」の効果もあります。
さらに、上司からフィードバックをもらうことで、自分の立ち位置を見直すキッカケにもなります。
そして、上司が自分の話を親身に聞いてくれているという実感は、部下にとっては何より心強いものです。上司が自分のことを考えてくれているとわかると、上司への信頼度が増し、上司とのコミュニケーションへの抵抗がなくなります。
困った時には上司が相談に乗ってくれると思えれば、果敢に仕事に挑戦していくことができます。また、上司が受け止めてくれると信じられることで、自分の案を会議や現場で積極的に発言できるようにもなるでしょう。
他のミーティングとは違う1on1ミーティングの特徴を理解する
いまは一般的にビジネスミーティングの時間を短縮する傾向にあります。それにも関わらず1on1ミーティングを導入する企業が多いことには理由があるのです。
通常の会議は三人以上、場合によっては非常に多くの参加者を伴って開催されることもあります。また、会議の参加者は対等の立場ではなく、上下関係がはっきりしています。さらに、当然のことですが議題に沿った進行が求められます。
そのような通常の会議では、部下からの発言の機会は限られています。プレゼンテーションや質問への回答なども限定的になりがちです。もし部下に自らの考えがあったとしても、上司が主導権を握る会議の中で発言することは少なからず勇気がいるものです。
しかし、1on1ミーティングの主導権は部下にあります。そしてそこでは、上司は部下をサポートするための存在なのです。
通常の会議の目的は会社のさまざまな事案を決定していくことですが、1on1ミーティングの目的は部下をサポートすることです。社員一人一人に焦点を当て、上司と部下が一対一で対話し、部下の育成のために行うのが1on1ミーティングなのです。
また、通常の会議では議題がありますが、1on1ミーティングに議題はなく、臨機応変に話題を変えていくことができます。会話する話題も流れも、部下の気持ちに添って進められるのです。話すことは部下が決めてよいのです。コミュニケーションも会議のようにかしこまった形式ではなく、リラックスできる雰囲気で行われることが理想です。
1on1パーフェクトガイドをプレゼント!
1on1パーフェクトガイド
この資料で分かること
- 1on1の目的と活用方法
- 1on1導入での失敗例
- 1on1で取り扱うべき話題