1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談のことです。上司ではなく部下が主役の場とされ、導入企業も年々増えており、様々な事例があります。組織力を高めるには有効なものとされていますが、どのように取り組めばよいのでしょうか。
目次
導入する目的をはっきりさせる
まずは、自分達が何故1on1を導入したいのか、それによってどのような効果を求めたいのかを確認しましょう。「とりあえず新しいことをしてみよう」とただ導入するだけでは、通常の評価面談と変わらず、組織の課題解決にはなりません。
導入に成功している企業には、先に見据えた「大きなゴール」を定めています。そしてその大きなゴールを達成するために何をすればいいのか、という観点から、達成への第一歩として効果的に導入されています。
部下のための1on1
1on1とは、部下の成長を促し、自発性を引き出すためのものです。会社を支えているのは1人ひとりの社員です。その社員の能力、意欲を高め、自らの仕事や会社に対しての満足度を上げていくことが前提にあります。
早期に結果を求めないこと
そもそも1on1は、すぐに効果が現れるツールではありません。メリットを大きく得ている企業は、最初から導入の目的がはっきりしています。そして実践していく中で、トライアンドエラーで取り組み方や内容を改善していく柔軟さがあります。1on1について、即座に良い評判を求めて焦らないよう、気をつけましょう。
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多くの企業で導入・実践されているのは、どのような内容なのか。ここからは、様々な成功例を見ていきましょう。以下3つの視点で事例をご紹介します。
- 事例1.株式会社ディー・エヌ・エー:新入社員の育成、配属先決定に活かす
- 事例2.株式会社キャナル:中堅マネージャー陣の更なる育成につなげる
- 事例3.パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社:社内風土に変革を起こす
事例1.株式会社ディー・エヌ・エー:新入社員の育成、配属先決定に活かす
まずは、入社直後の研修段階から導入している企業をご紹介します。
株式会社ディー・エヌ・エーは、ソーシャルネットワーキングサービスやモバイルゲーム事業から、プロスポーツチームまでを保有する企業として、広く知られています。
これまで、新入社員の研修が終わり各部署へ配属後は、育成業務を各部署に委ねる状況でした。それを3年後、5年後、その先へと社員の成長も見据えて、研修段階から1on1の導入を始めました。
同社では新入社員に対し、管理職側よりも近い距離でサポートができるよう、研修期間中に先輩社員がローテーションで「メンター」としてつく制度があります。このメンターと新入社員とで1on1を導入。新入社員には、自身のこれまでの歩みを振り返ってもらうことで、自己理解を深めてもらいます。
そしてメンターは、新入社員の強みや悩み、これから現場に出て行く上での目標などを理解した上で、研修中のサポートをします。その上で、配属先決定につなげていくのです。
更に1on1の記録を残しておくことで、配属先で継続実施する1on1でも、1人ひとりの面談内容を引き継ぐことができます。現場に出た後も、迅速にフォローできる体制を取れるようになっているのです。
配属先への納得感があれば、業務へのモチベーションアップ、離職率低下にもつながり、組織力の強化になります。
【参考】新入社員を配属後もサポート! 現場のメンターと人事が連携するDeNAの新卒オンボーディング改革 | TeamUp MAGAZINE
ポイント:早期離職を防ぐ手段として
初めて仕事に取り組む新入社員の場合、仕事への不安、会社への緊張感はあまりにも大きいでしょう。
そこに、1on1で先輩社員と気軽にコミュニケーションを取ることができれば、不安や緊張は少しずつ払拭され、仕事に取り組みやすくなります。
事例2.株式会社キャナル:中堅マネージャー陣の更なる育成につなげる
社員の平均年齢が若い組織でも、人材育成は大きな課題です。広告・通信事業を手掛ける株式会社キャナルでは、会社の成長に伴い社員が増え、1人ひとりのフォローが難しくなってきていました。そこで、より迅速に個々の悩みや課題を拾い上げる手段として、1on1が導入されました。
改めて部下と1on1で向き合うとなると、やはり上司としても不安になります。同社では、上司から要望があれば管理職側も同席しています。
1on1終了後に上司へ「こうした尋ね方なら部下も答えやすいのでは」「自分の立場なら、どういう言い方ができるか」など、フィードバックする環境を作っているのです。
また、1on1の記録は保存しているので、後からお互い振り返りをすることもでき、部下の成長を感じることもできます。その上、今までは育成に関心の低かった上司自身が、部下の育成について積極的に動くようになり、またリーダー間同士でもコミュニケーションの機会が増えるようになったそうです。
上司の成長なくして、部下の成長はありません。1on1は上司自身の意識改革にも大きな影響を与えます。
【参考】1on1ミーティングでのメンター経験が、ミドル人材を成長させる | TeamUp MAGAZINE
ポイント:リーダーの未来を作る
そもそも、人材育成が得意でリーダーに抜擢される、というケースは珍しいでしょう。部下を持つことで初めて、どうやって指導していけばよいか悩むことも多いと思います。
1on1を導入することで、育成方法や個々の課題について情報共有し、コミュニケーションの方法を模索するきっかけにもなります。これはリーダー自身の成長にも、大きく影響を与えることになります。
事例3.パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社:社内風土に変革を起こす
家電業界のトップ、パナソニックの社内カンパニーとしてBtoB事業を手掛けるコネクティッドソリューションズ社。
対企業という事業柄、より柔軟で自由な発想が求められますが、いつのまにか同社内には、部下が上司に気を遣うという、内向きな古い空気が定着していました。そこで、上司と部下の関係性に変革を起こす手段として導入されたのが、1on1です。
同社では、1on1の重要性を納得してもらうため、係長以上の社員に事前研修を行いました。全国での受講者は、のべ1800人にのぼります。
更に、上司向け、部下向けそれぞれに1on1のパンフレットを作成。上司向けには1on1の基本である傾聴をはじめとした実践時に気をつけることや、部下との接し方などを記載しています。
1on1の導入にあたっては、上層部や現場からも不安の声は多かったようです。ところが、事前研修受講者の9割は「役に立つ」と回答。また、実際に1on1を実施した後のアンケートでは、部下の7割が「上司との1on1に満足、とても満足」と前向きな回答になっています。
実際、1on1導入後は徐々に上司と部下の関係性にも変化が見え始め、部下が業務へ積極的に動き出しているといいます。事前に1on1への周知・理解が徹底されたことで、変革を受け入れやすかったという部分はあるでしょう。
【参考】[イベントレポート] パナソニックの事業・マネジメント変革に向けた1on1導入と現状 ビジネスコーチ株式会社 | 日本の人事部「HRカンファレンス」
ポイント:古き良き習慣を打破するきっかけ
歴史があり、大きな企業であればあるほど、和を尊ぶあまりに自由な発想が出にくいと思います。確かに全体の和は大切ですが、それによって社内の空気が澱んでしまっては、元も子もありません。現状打破のきっかけに、1on1は有効でもあります。
成功事例から学べる成功の秘訣とは?
ここまで見てきた事例だけでも、それぞれの企業によって1on1導入の流れや実践方法など、同じものはないことがわかります。中でも共通するポイントについて、振り返ってみましょう。
最初の組織分析が重要
各企業によっても、抱えている課題は様々です。最終的な大ゴールのために、まずどのようなところから動けばいいのか。自分達の組織では、どのような克服すべき課題があり、どれだけの目標があって、それを達成するためには何をすべきなのか。最初の分析を、しっかり行ってください。
目的周知は徹底する
最初の分析結果によって、1on1の目的が見えてくるでしょう。導入準備は、人事部や管理職だけではありません。対象となる社員1人ひとりが1on1の目的を理解できるよう、焦らずにきちんと周知していきましょう。
他社事例に拘らない
どんなに準備を徹底していても、いざスタートして初めてトラブルや課題が見つかるものです。
他社の事例に縛られず、1on1の実施時間や頻度を見直し、部署を跨いだ1on1に取り組んでみるなど、試行錯誤を繰り返しましょう。
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詳細はこちら1on1の導入事例を参考に、自分の組織にマッチした方法を考えよう
先例にならうことは、新しい取り組みを導入する場合大切なことです。しかしこれまで紹介したように、成功パターンは組織の数だけあります。先例にとらわれることなく、自分達の組織にマッチした1on1を追及していきましょう。
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